【太宰治】最年少幹部に捕まりました。【ヤンデレ？】

歪んだ愛37 ページ37

絶叫したかった。けれど一度口を開いてしまえば言葉と共に理性までもが吹き飛んでしまう気がして、思わず手の平で口元を抑える。

ナカハラさんの台詞を嘘だと信じたい。
しかし、幾ら記憶を思い起こしても彼が言っている事は本当で酷く狡いと感じる。確かに口にはしていないが、あんなの肯定したも同然であろう。
今更あれこれ騒いでも時間は戻らないし、悪いのは騙された私だと自分自信が充分に理解している。
けれど全身から湧き立つ怒りや悲しみや悔しさは抑え切れなくて、それが全て塊となり喉の奥から込み上げてくる感覚に襲われた。

堪らなく気持ちが悪い。
一瞬でも信じ喜んでいた過去の私が滑稽で、彼がこの姿を見て口元を歪ませていたのだと考えるとやり切れない。

「俺からはご愁傷様としか言いようがない」
ナカハラさんは肩を竦めると、諦めろと言わんばかりの視線を投げる。

もう残された道はない。
いっそこれが夢だったらどんなに良かったことか、いっそこの残酷な真実を悪夢にしてしまおうか。
意識を手放そうとしたその時だった。

「眠るのなら、私の腕の中にして欲しい」

汚れひとつ無い白い包帯に巻かれた腕が私の腰を力強く掴んだ。それは死者の腕ではない、れっきとした血の流れる生きる者の腕で。じんわりと暖かい体温が腰周りを侵食する。自分ではない他人の体温に恐怖を感じるが、全身の力が抜けてしまった今逃れる術もなく。

私の肺は役割を拒むように酸素を受け付けず、口は地面に放り出された魚の如くただパクパクと開け閉めを繰り返した。吸い込んだ酸素が形を成したのか、塊となり気管で止まる。吐き出すことも飲み込む事も許されない塊は行き場を無くし私を苦しめた。
浅い呼吸を繰り返し、全身が痙攣を起こす。このまま呼吸が止まってしまえば楽なのではという思考さえ過ぎるが、彼の前で弱さを見せたら終わりだと思い無理矢理にでも呼吸の仕方を思い出した。

「離して、今すぐ」
無理矢理彼の腕の拘束から逃れるようとするが、今度は両手で背後から手首を掴まれる形で全身を抱きしめられてしまい余計に逃げにくくなってしまった。

「少しイキがよすぎる。もう少し大人しい方が私好みなのだけど」

耳元で囁かれ、終いには甘噛みをされる。吐息の擽ったさにに身をよじれば彼はお得意の表面上の笑い声を上げた。

続く  (更新停止中) お気に入り登録で更新通知を受け取ろう

←歪んだ愛36

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す