歪んだ愛30 ページ30
気がついたらベンチに座っていて、周りは霧がかかったように白い。よく見ると周囲に人は居るが皆何かが可笑しい。やけに重いぼんやりする頭を動かせば、誰一人動いていなくマネキンの様に固まっている事に気が付き、私はこれが夢だと直感的に理解した。
不気味な夢だとまるで他人事の様に呑気に思いながらも、辺りを散策しよう立ち上がろうする。しかし急な眩暈に襲われよろけてしまい、その拍子に人とぶつかってしまった。咄嗟に謝ると相手は優しい口調で「大丈夫だ。こちらこそ済まなかったね」と言い私の腕を支えてくれた。
包帯を巻き黒いコートをまとった細身の男性。手に赤紫色の錨のような花弁をした、とても変わった花をもっており思わず凝視してしまう。
「おや、そんなにこの花が気になるのかい?」
「すいません、珍しい花だなと思い」
素直に告げると男性は愛おしそうにその花を見つめ「イカリソウだよ」と言った。
聞き覚えのない花名に首を傾げると、彼は私の瞳をじっと見つめる。
すると私は得体の知れない恐怖に包まれた。背筋が凍り、思わず息を殺しただ彼の瞳を見つめ返すことしか出来なくなる。
一歩後ずさりしようにも、彼の手が痛いほどに掴んでくる為に身動きが取れない。更には爪が皮膚に食い込み断として逃がしてきれる気配はない。
「私は死んでも君から離れないよ」
彼が言い放てば地面からは黄色い小さな花を咲かせたツタが生え私の体にまとわりついた。ツタは有り得ないスピードで成長し足首や手首をきつく締めあげる。肉と骨が悲鳴を上げ、もがけばもがくほど絡まり酷く熱い痛みに襲われ呻くような声が漏れる。
「痛い」と訴えると彼は冷たい音色で
「私も痛いよ」と言い返す。彼が痛がるのか見当がつかなく、意味が分からないと視線をやれば「Aのせいでとても心が痛い」と強く抱きめられた。
腕力とツタと二つの力に締められ息が詰まり、臓器が圧迫され、骨が折れそうな程に締められる。
酸素を求め口を開けば、彼が私を抱きしめた拍子に宙を舞ったイカリソウが口に入り込んだ。吐き出そうとすると、彼の細い指が口内に入り込み花を喉奥へ押しやった。
酷く気持ち悪い。
胃の中のものが逆流し吐き出しそうになるが彼は私の口元を抑え、封じた。行き場をなくした花はすんなりと食道を通り思わず飲み込んでしまう。
その様子を確認すると満足そうに太宰さんは笑い私の耳元で囁いた。
「捕まえた」
1997人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
零華 - 最高でした!太宰さんと中也さんがメッチャ好きなので、巡り合えてうれしかったです!更新待ってるので、できたらよろしくお願いします!応援してます! (2020年12月21日 17時) (レス) id: ff0d36277d (このIDを非表示/違反報告)
旧双黒推し - 更新待ってます(´TωT`) (2020年9月3日 19時) (レス) id: ec8ec8961f (このIDを非表示/違反報告)
エトセトラ - ゆっくりで良いので出来たらまた・・・! (2020年6月3日 12時) (レス) id: 348703d198 (このIDを非表示/違反報告)
名無し(プロフ) - 完結を見たいです。急かす気はないです、楽しみに待ってます (2020年5月19日 17時) (レス) id: 0425a49796 (このIDを非表示/違反報告)
たくあん - すっごい面白いです!この作品!!作者様のペースでいいので頑張ってくださいね! (2019年11月17日 22時) (レス) id: a353fd29dc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:涙夢 | 作成日時:2017年2月27日 23時