歪んだ愛29 ページ29
一瞬の出来事だった。
ライターが床に落ち金属音を響かせると部屋は炎と煙に包まれ、火災報知器が五月蠅いほど響きわたり耳をつんざく。
突然の出来事にただ私は茫然と立ち尽くしじっとこの光景を脳裏に刻んだ。
こんなにもあっけなく私を閉じ込めていた空間は壊れた。火はシーツに乗り移るとさらに激しく燃え上がり、次々に部屋を焼き払う。その様子が滑稽で、絶対に逃げられないと思っていた空間は所詮ただの部屋だったと気付かされた。
「これで手前を閉じ込める鳥籠は無くなっただろ？」
ナカハラさんは私の手首を強く握りしめ、引き寄せると愉快そうに声を漏らした。その通りだと釣られて微笑み返すと「無いよりかはマシだろ」とスーツのジャケットを脱ぐと私に被せた。視界が黒に覆われ、布が顔に触れ少しくすぐったい。
「息苦しいかもしれねぇが少しの我慢だ」
部屋に充満した煙と火の粉から身を守るためにわざわざジャケットを貸してくれたナカハラさんの優しさが嬉しくて「ありがとうございます」と礼を言った。
彼は「おう」と短く返事をすると私を前から抱く体制で持ち上げた。途端に足が床から離れ、一体何事かと尋ねる暇も無く歩き出す。硝子を踏む音が聞こえた為に窓際に向かっていることが予想でき、嫌な予感がした。
「振り落とされンなよ」
あり得ないと思ったがどうやら予感は的中らしい。
思わず彼の首に手を回し、しっかりと捕まれば左手で腰の当たりを先ほどよりも強い力で支えてくれた。スーツの隙間から部屋を見れば炎はもうすぐ傍まで来ていて、もう逃げ場はなくあと少しで炎の餌食となってしまう。
割られた窓硝子の間から吹く風が頬を撫で、髪をなびかせる。さらに風は室内を吹き抜け炎を揺らめかしどんどん近づいてきた。
燃える、そう思った瞬間爆発音がし「行くぞ」とナカハラさんが叫ぶと爆風に身を預け窓から身を投げた。
おかしなことにゆっくりと下に下がる感覚はするが、まだ体は地面に打ち付けられていない。一体重力はどうなっているのか。
確認しようにもジャケットに視界を奪われて現状が分からないが、熱風により視界が少し開けた。
その時に隙間から見えたのは燃え盛る部屋で、熱風と炎により物が破壊される音を聞きながらやっと解放されたのだと私は安堵した。
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零華 - 最高でした！太宰さんと中也さんがメッチャ好きなので、巡り合えてうれしかったです！更新待ってるので、できたらよろしくお願いします！応援してます！ (2020年12月21日 17時) (
レス) id: ff0d36277d (このIDを非表示/違反報告)
旧双黒推し - 更新待ってます(´TωT`) (2020年9月3日 19時) (レス) id: ec8ec8961f (このIDを非表示/違反報告)
エトセトラ - ゆっくりで良いので出来たらまた・・・！ (2020年6月3日 12時) (レス) id: 348703d198 (このIDを非表示/違反報告)
名無し(プロフ) - 完結を見たいです。急かす気はないです、楽しみに待ってます (2020年5月19日 17時) (レス) id: 0425a49796 (このIDを非表示/違反報告)
たくあん - すっごい面白いです！この作品!!作者様のペースでいいので頑張ってくださいね！ (2019年11月17日 22時) (レス) id: a353fd29dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：涙夢 | 作成日時：2017年2月27日 23時
