歪んだ愛19 ページ19
少しやり過ぎてしまったかなと、太宰は後悔の念を抱きつつ小さくため息をついた。しかしお手洗いから出てきたAちゃんが虚ろな瞳をしていたものだから、やはり私の行動は間違っていなかったのだと思い直した。全てを諦め、何もかも捨ててしまった彼女の瞳は前のように希望の光を灯してはいない。
Aは完全に堕ちた、私に抗おうとはもうしないだろう。
「おいで?」と優しく声を掛ければ今にも倒れそうな弱々しい足取りで私の元へ近づいてくる。Aちゃんに向かい手を広げると、少し躊躇う動作を表したが腕の中にすっぽりと収まってくれた。
なんて可愛いのだろうか、酷く愛おしい。
毛先を指で撫でるように触り束を取りそっと口付けを落としてから包み込むように抱きしめた。小さく柔らかい彼女の身体から暖かさを感じ安心さを覚える。
私は軽く深呼吸をして内心緊張しながらも今にも泣きそうなのを抑えきれず声を震わせてながらも問いかけた。
「ごめんね…私を嫌いになったかい…?」
答えは解っていた、けれども確信は無いために不安からか鼓動が早まる。もしもAが私を拒んだらと考えるだけで恐ろしい。敵のアジトに乗り込んだ時よりも、何百もの銃を向けられた時よりも、拷問にかけられた時よりも、怖い。それ程に私にはAが必要で離れて欲しくないのだ。
「…いいえ」
小さな声だがはっきりと、Aちゃんはそう答えた。その事がとてつもなく嬉しくて安堵する。
「本当に?私が怖くないのかい?」
「怖くないと言ったら嘘になります。けれど…」彼女は一旦口を閉じ苦笑しながら、
「そんな顔で言われても困りますよ。」と言って私の頬をそっと撫でた。Aちゃんの指が濡れていて初めて泣いていることに気がついた。私に触れる彼女ははやり暖かくて又もや涙が溢れそうになる。
いつの間にかAちゃんの瞳の中に光が戻り底には優しさで満ちているのだからどうしようもない気持ちになる。何故こんなにも彼女は優しいのか、彼女を支配しようと酷い事をしたのに出会った頃と変わらずAちゃんは私に優しくする。
一瞬私の機嫌を取ろうとしてるのではなんという考えが過ぎるが、そうではないと確信する。表情と声のトーンそれらを見れば本心から心配してくれているのだと分かり、それが逆に困る。
余計に手放せなくなる、
余計に彼女なしでは生きられない。
きっと私はどうしようもない程に依存してしまっている。
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零華 - 最高でした!太宰さんと中也さんがメッチャ好きなので、巡り合えてうれしかったです!更新待ってるので、できたらよろしくお願いします!応援してます! (2020年12月21日 17時) (レス) id: ff0d36277d (このIDを非表示/違反報告)
旧双黒推し - 更新待ってます(´TωT`) (2020年9月3日 19時) (レス) id: ec8ec8961f (このIDを非表示/違反報告)
エトセトラ - ゆっくりで良いので出来たらまた・・・! (2020年6月3日 12時) (レス) id: 348703d198 (このIDを非表示/違反報告)
名無し(プロフ) - 完結を見たいです。急かす気はないです、楽しみに待ってます (2020年5月19日 17時) (レス) id: 0425a49796 (このIDを非表示/違反報告)
たくあん - すっごい面白いです!この作品!!作者様のペースでいいので頑張ってくださいね! (2019年11月17日 22時) (レス) id: a353fd29dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:涙夢 | 作成日時:2017年2月27日 23時