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歪んだ愛18 ページ18

押し黙る私に呆れたのか、太宰さんは深いため息を付き私の腕を縛るリボンを解いた。やっと腕が自由になった事への開放感により安堵し、気を緩めてしまったのが大きな間違いだった。
あっ、と声を出す間もなく一瞬にして世界が傾き全身を強く床へ叩きつけられる。何が起こったのか脳が上手く働かずただ痛いという感覚のみが全てを埋め尽くした。

「お手洗いはこの部屋を出て左に曲がってすぐの所だ。はやく行ったらどうだい?」

頭上から酷く冷たい声が降り注ぎ、背筋が凍る。そして瞬時に私は太宰さんの手により床に投げ出されたのだと理解した。

はやく行きたい、もう我慢が出来ない。
自由になった腕を使い立ち上がろうとするが、私は床に這いつくばったまま動く事が出来なかった。我慢の限界か、これ以上に身体を動けない。力を振り絞り四つん這いになりながらも前に進もうとするが足の力が抜け、瀕死の虫のように哀れにも床に身体を投げ出す状態になる。冷ややかな太宰さんの視線が突き刺さり私は自分の哀れな姿に屈辱的な感情が沸き立ち目頭が熱くなった。

「行きたいのでは無かったのかい?床を汚すのだけは勘弁して欲しいな。」

太宰さんは先ほどまで私が拘束されていた椅子に腰をかけ、足を組みながら涼しい顔で意地悪な声を掛ける。冷たいフローリングの床から起き上がれないこの状況で私が取るべき正しい行動はただ一つ、プライドと未来を捨てる事だ。

「……助けて。」
震える声で太宰さんを見上げ、懇願する。
床の冷たさが身にしみて余計に惨めになる。

「人に物を頼む時の口の聞き方を習わなかったのかい?他に言うこともあるだろうに。」
本当に意地悪だ、私の口から直接言葉を聞けない限り絶対に手を貸してはくれないのだろう。私は諦めて、再び口を開く。

「逃げようとしてごめんなさい。 助けて下さい…。」

この言葉を口にした途端彼の口角が明らかに上がり、満足気な顔つきになる。そして太宰さんは私の背中と膝の下に手を入れゆっくりと持ち上げ、お姫様抱っこでお手洗いまで運んでくれた。

お手洗いに着き自分の粗末な姿を晒さずに済み助かった、と酷く安心する。個室に入り無事に用を足す事が出来てスッキリしたところで冷静な思考が戻ってくると途端に気分が悪くなり、思わず便座に手を付き私は胃の中の全てを吐き出しながらこう思った。後悔がどっと押し寄せ心が潰れてしまいそうだ。後悔も感情も全て水に流してしまえ。
太宰さんに従えばきっと安全なのだから。

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設定タグ:文スト , 太宰治 , ポートマフィア   
作品ジャンル:アニメ
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零華 - 最高でした!太宰さんと中也さんがメッチャ好きなので、巡り合えてうれしかったです!更新待ってるので、できたらよろしくお願いします!応援してます! (2020年12月21日 17時) (レス) id: ff0d36277d (このIDを非表示/違反報告)
旧双黒推し - 更新待ってます(´TωT`) (2020年9月3日 19時) (レス) id: ec8ec8961f (このIDを非表示/違反報告)
エトセトラ - ゆっくりで良いので出来たらまた・・・! (2020年6月3日 12時) (レス) id: 348703d198 (このIDを非表示/違反報告)
名無し(プロフ) - 完結を見たいです。急かす気はないです、楽しみに待ってます (2020年5月19日 17時) (レス) id: 0425a49796 (このIDを非表示/違反報告)
たくあん - すっごい面白いです!この作品!!作者様のペースでいいので頑張ってくださいね! (2019年11月17日 22時) (レス) id: a353fd29dc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:涙夢 | 作成日時:2017年2月27日 23時

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