歪んだ愛13 ページ13
太宰さんの視線が突き刺ささり、私は声にならない悲鳴を上げた。足が、もはや全身が震え目眩まで起こす。
太宰さんは私の両腕を痛いくらいに握り締め、身体をぴったりと背後からくっつける。
何か、答えなければ。
私は声が震えるのを抑え何とか口を開いた。
「実は、お手洗いに行きたくて…。」
決して嘘ではない。実際行きたいのは本当であって、開き直って「逃げようとしました。」なんて言うより余っ程ましな答えだ。
すると太宰さんは意外にも納得したのか、両手首を掴む手を離し「案内するよ。」と言った。
彼に連れられ寝室から出て、無駄に広い廊下を歩く。寝室よりもひんやりとしていて、私は小さく身を震わせた。
ひたすら無言で歩き、大きな扉をくぐるとリビングらしき場所へとたどり着く。
お手洗いに行く筈ではなかったのか、と尋ねようとしたがどうにも質問しにくい雰囲気だ。
私は太宰さんの後へ続き中へ入る。
陽の光がとても眩しい。
久々の太陽の眩しさに目を細める。
リビングは広く、窓に枠がないからかとても開放的である。部屋全体を照らすように日光が注がれていてとても温かい。
「美しい景色だろう?」
腕を引かれ、窓に近づく。
太宰さんの言う通り街が一望出来きヨコハマの海が陽の光を反射し輝いていて綺麗だ。
視界を遮るビルなんてものは無く、空が近く感じる。
一体地上からどのくらい離れているのだろうか。まるで此処は空に浮かぶ鳥籠のようである。社会から切り離されてしまった気分だ。
「私とAだけの空間だ。」
太宰さんは私の肩を掴み、胸に引き寄せ抱きしめる形をとり何処か満足気に言った。
「此処はヨコハマの中で一番高いタワーマンションで完璧なセキュリティで守られている。防弾ガラスに監視カメラ、指紋認証に…数え上げたら限りがない。更にはカードキーと暗証番号を知らなければ中へは勿論入れないし外へ出ることも不可能だ。」
この言葉を聞き矢張り、と思う。
太宰さんに嘘は通用しない。
「防音は勿論下数十階は空き部屋になっていてね、因みに上は無い。最上階だからね。」
私はこの言葉に驚き、絶望した。
つまり私がどれ程声を上げ外部に助けを求めてもようと無駄なのだ。
「何故ですか。」
私は蚊の鳴くような声で尋ねた。
「何故私を閉じ込めるのですか。
私には、全く理解出来ません。」
私の問に太宰さんは小さく首を傾げた。
「如何してだと思う?」
そう答える太宰さんは何処か悲しげに見えた。
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零華 - 最高でした!太宰さんと中也さんがメッチャ好きなので、巡り合えてうれしかったです!更新待ってるので、できたらよろしくお願いします!応援してます! (2020年12月21日 17時) (レス) id: ff0d36277d (このIDを非表示/違反報告)
旧双黒推し - 更新待ってます(´TωT`) (2020年9月3日 19時) (レス) id: ec8ec8961f (このIDを非表示/違反報告)
エトセトラ - ゆっくりで良いので出来たらまた・・・! (2020年6月3日 12時) (レス) id: 348703d198 (このIDを非表示/違反報告)
名無し(プロフ) - 完結を見たいです。急かす気はないです、楽しみに待ってます (2020年5月19日 17時) (レス) id: 0425a49796 (このIDを非表示/違反報告)
たくあん - すっごい面白いです!この作品!!作者様のペースでいいので頑張ってくださいね! (2019年11月17日 22時) (レス) id: a353fd29dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:涙夢 | 作成日時:2017年2月27日 23時