検索窓
今日:7 hit、昨日:1 hit、合計:2,763 hit

解放、そして再度 ページ21

『てかさぁ、そもそもおかしくない?何で私が桜灰から狙われなきゃいけないの?篤樹でいいじゃん』

それから一時間。風呂上がりに濡れた髪をそのままに庵里は言った。

「知るか」
『おかしいでしょ、だって私だけじゃないじゃん篤樹だって雅火だっておんなじ条件だったじゃん?幼なじみなんだからさ、篤樹でも雅火でもよかったじゃん』
「だから知るかよ。何でいきなりそんなこと気にし始めるんだ」
『お風呂でね、一人で落ち着いてきたらふと思ったの』
「何か慌てる要素でもあったのか?」
『……いや、どうだろ』
「何なんだよお前」

自分でも分からない。どうしたのだろう。交流会から変だ。もしかしたら何か変な術式にでも捕らわれているのかもしれない。

『……てか三人何してんの』
「ゲーム」
『それ私のやつなんだけど』
「借りてる」

三人がやっていたのは有名なゲーム。お前もやる?と聞かれ即答した。

『やるに決まってんじゃん。てか私のだし』
「勝負しようぜ。勝ったら五百円」

五条からのその誘いにもちろん、と頷きコントローラーを握る。
五分後、五百円を払ったのは五条だった。

「おつかれ悟。こいつゲームは馬鹿みたいに強いからな」
「先に言えよ」
『予想外に弱かったね五条サン』

鼻で笑ってやると彼は悔しそうな顔をして、もう一度勝負を挑んでくる。もちろん何回やっても庵里の勝ち。他の二人は挑んでくることもない。身の程を分かっているようだ。五条に五回ほど勝ち二千五百円を獲得した庵里は篤樹と夏油に慰められている彼を見て、篤樹を見て、夏油を見て、手元の硬貨を見る。
何故自分は男と一緒にゲームなんてしていたのだろう。ついこの間までそんなに話もしなかった彼らとそこそこ仲良くやれているのは何故だろう。

首を傾げても答えは出ない。ああそれでも、と思い付いたのが、話したから、だった。夏油の前で少し色々なことを話したから楽になったのかもしれない。
やはりあれは呪縛なのだ。庵里が一人で抱え込むには重すぎた、彼女にとっての罪。罪の共有は人に僅かな安らぎを与えた。凪や篤樹に話しても消えなかった水中で息をしているかのような孤独と息苦しさ。
話してしまえば水の中に引きずり込むその過去を振り払い、水の上の空気を肺一杯に吸い込めたのにも関わらず、それすらも出来ずにずっと苦しんだ彼女は今、ようやく過去を振り払って水面に向かい始めたのかもしれない。
それはきっと誰にとっても喜ばしいことのはずである。

■→←■



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 6.7/10 (3 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
3人がお気に入り
設定タグ:呪術廻戦 , 夏油傑
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:籠目 | 作成日時:2021年2月8日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。