咲いた黒と黒 (ページ16)

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■ ページ16

結果から言うと彼らの勝利だった。まあ当然だろう。

「……で、お前何してんの」
『探し物？』

何か嫌な予感がするから、と消火栓の下を覗き込んだ庵里は、それを見つけた。某有名着せ替え人形が横たわっている。校舎の老朽具合に比べて、明らかに新しい。かなり最近のものだ。しかも落とし物と言うには知った呪力を感じる。
引きずり出して流れるように床に叩きつけて、踏み潰す。
二人からは変なものを見る目をされたが、残骸になるまで壊す。絶対に桜灰が関わっている。

壊し終えて、深く呼吸をする。顔を上げる。目の前に男二人。

『……帰ろう。私帰って寝たい』

何もなかったかのように言い放つ彼女は言葉で言い表せない若干の異様な雰囲気を纏っていた。しかしそれも一瞬のこと。すぐに普通の霧村庵里に戻り、近くの窓を割ってさっさと外に出る。僅かに戸惑ったように見えた二人もそれに続いた。帳も上げて、空を見るとかなり暗い。そんなに長く校内にいた訳ではないのに不思議だ。中は時間の感覚が違っていたのだろうか。そこまで考えて携帯を開く。時間を確認すると既に電車はない時間帯。後ろの二人もそれに気付いたのだろう。どうしようかと話し合っていた。余計なお世話かとは思いながら庵里は電話をかけた。もちろん相手は篤樹である。彼はすぐに出た。

「もしもし」
『あ、篤樹？部屋に五条サンと夏油サン泊めてあげて。もう終電ないから』
「何で俺なんだよ。自分で泊めろ」
『は？私の部屋に人を泊められると思ってんの？あんな何もない部屋に？馬鹿じゃない？』
「お前悟達と仲良くなったのか？」

電話している庵里を見て彼らは話し合いを止めた。それを横目に見ながら篤樹との会話を続ける。

『何、篤樹拾い食いでもした？私があいつらと仲良くなれると思ってんの？』
「拾い食いはしてねえよ。……とりあえずどっちかに電話代われ」

何でだよ、という庵里の言葉はいいから代われという言葉で返された。不満に思いつつ携帯を夏油に渡す。彼を選んだ理由は近かったからだ。

『篤樹。電話代われって』

それだけ言って携帯を押し付け、二人から若干離れる。しばらく夏油と篤樹は会話を続け、また携帯が庵里に返ってきた。

「寄り道せずにさっさと帰れよ」
『私が寄り道したことあった？』
「いや、悟とか」
『無視するに決まってんじゃん』

確かに、と笑って篤樹は電話を切った。
二人に泊めてやるから来いとだけ伝え、歩き出す。携帯は制服のポケットにしまった。