Fifty-seven ページ10
東の空から白澄み、徐々に日の光が見え初めてきた頃。
ようやく見慣れた山岳地帯の風景を見ることが叶った。
あぁ、戻ってきた。
バッキンガムは何故かそう思った。
一晩程しか村を空けていないというのに、まるで二週間程村を空けていたような感覚をバッキンガムは感じていた。
身体を蝕む毒のためか、それとも昨晩の陽動時に魔力を予定よりも消費したからか。
どちらにせよバッキンガムの体感時間では本当に久し振りにこの光景を見たと感じていた。
本来であれば馬は山を登る前に野に放つのだが、いざという時に足にも荷物運びにも、そして基調な食料にもなるため、村へと連れていく方針らしい。
相変わらず最後尾にいるバッキンガムも、微塵にも疲弊を顔に出すことなく無事に村に到着。
アーラシュとベディヴィエールが戻ってきた全員に帰還の労いの声を掛けていた。
「バッキンガム公も、よくお戻りになられました」
「やぁルキウス兄君、貴殿が回復されているようで私も嬉しいよ」
「ですから兄君ではないと何度言わせれば気が済むのですか貴方は。ですが、その切は御迷惑をおかけしました」
「ははは、気にしなくていいさルキウス兄君。兄である貴殿が動けないのなら弟の私が動かねばならないのでね」
からからと笑うバッキンガムは、昨日に比べて目に見えて元気になっているベディヴィエールに安堵した。
魔力的には潤沢しているとは到底言えないが、それでも昨日に比べると魔力も疲労も回復しているといえるだろう。
全員の馬を回収したのち、即席にて馬小屋を投影したバッキンガムは軽く話しつつ、再度広場へと二人して向かえば百貌が作戦成功について色々と言っていたらしい。
その途中。
「え」
「え？」
「お米？」
何やら俵藤太が俵を持って詠唱を唱えるや否や、彼が持った俵の大きさから想像もできないほどの大量のお米が溢れ出てくる、出てくる。
勢いを止むこともないそのお米は、乾いた大地を白波で満たしていく。
驚愕を浮かべる一同は、今日は御馳走だと浮き足立っていた。
俵を囲んで凄いやら何やら言う立香達を暖かな目で見ていたが、どくりと脈打つ鼓動に奥歯を噛み締めて耐え、にこりと笑う。
「宴か？ ならば清潔な水は必要であろう？ 準備してこよう」
「ありがとうバッキンガム！」
嬉しそうに笑う立香に片手を上げて、バッキンガムは足早く井戸の側の小屋とも言えない小屋へ。
その背中を鋭い目線で見るが、到底彼は気付かない。
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翔べないペンギン(プロフ) - 爆死なうさん» コメントありがとうございます。そういただけますと大変嬉しいです。拝読いただきありがとうございました。 (2021年2月16日 8時) (
レス) id: 968bf19702 (このIDを非表示/違反報告)
爆死なう - 素敵な作品をありがとうございました。 (2021年2月15日 0時) (レス) id: baaad41788 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：翔べないペンギン | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Information/
作成日時：2020年12月6日 18時
