Fifty-three ページ6
少し物音が響いたのちに、程無くして気絶した誰かを引き摺った粛正騎士が戻ってきた。
それは帽子を目深く被っている誰か。
身に纏う衣類がアグラヴェイン達の前にいるバッキンガムと同じ。
「如何いたしますかアグラヴェイン卿」
「……牢屋へ、と言いたいところだが、どうやら私を騙す魂胆のようだな。侵入者」
「！」
腰に携えていた剣を抜き、気絶しているバッキンガムに。
ではなく、バッキンガムを掴んでいる粛正騎士へと斬りかかった。
避けられるはずもなく、鋭い一撃を受けた粛正騎士は後ろに倒れながら光の粒子を放ちながら消えていく。
「味方にも容赦ないとは、酷い騎士だな。アグラヴェイン卿は」
先程まで黙っていた彼等の前に立っていたバッキンガムがやれやれと肩を竦めていた。
「しかしあまり感心はしないな。敵と間違えて殺すのは味方の士気を下げかねない」
「何を言う。この者に暗示か何かを掛けて、私の隙をみてその人形で何かをさせようとしていたのは貴様だろう」
「おや、それをわかっていて斬ったのか。ならば尚のこと貴殿は
粛正騎士がいた傍らに寝ているバッキンガムの衣装を纏った何かを切れば、中から液体が出てきた。
その液体は流れ出るように地面を濡らしていく。
加えて鼻腔を掠めるのは硫黄のような匂い。
「石能油か」
石能油とは、現代で言う石油とも呼ばれいる鉱物資源の一つ。
「御名答。隙をみて貴殿が斬ったあの騎士に割ってもらい、ちょっとした火遊びにでも付き合っていただけたらと思ったのだが、なかなか上手くいくものではないな」
ふぅ、とバッキンガムは溜め息を大きく吐くがにこりと笑う。
「まぁ貴殿があの騎士の代わりに割ってくれたので問題ないだろう」
「御託はいい。貴様の目的はなんだ」
「ただの時間稼ぎさ」
そう言うや否や、空中より何かが飛来。
それは松明であった。
「！」
複数個の松明が降り注ぐ。
その一つが、石油の上に落ちた。
瞬く間に石油へと燃え移り闇を明るく照らす業火へと変わり果てた。
「とまぁ、こうして時間を稼ぐつもりだったわけだ。途中色々とあったが結果から見れば貴殿を足止めできた。上々と言えるだろう」
慌てる粛正騎士達とは別に、場違いにもにこやかな笑みを浮かべたバッキンガムはアグラヴェインに一礼をしたのちに、消えた。
眉間に皺を寄せ、バッキンガムがいた箇所を睨んだアグラヴェインは直ぐ様砂を掛けるようにと部下達に指示を飛ばしていた。
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翔べないペンギン(プロフ) - 爆死なうさん» コメントありがとうございます。そういただけますと大変嬉しいです。拝読いただきありがとうございました。 (2021年2月16日 8時) (
レス) id: 968bf19702 (このIDを非表示/違反報告)
爆死なう - 素敵な作品をありがとうございました。 (2021年2月15日 0時) (レス) id: baaad41788 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：翔べないペンギン | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Information/
作成日時：2020年12月6日 18時
