Rejection side story : Merlin & Buckingham ページ42
鼻腔を擽るのは花の香り、肌を撫でるのは風に揺れる草花か。
ゆっくりと瞼を持ち上げれば、視界に広がるは何処までも青く蒼い空。
ふわりと風が舞うと桃色の美しい花弁が空を舞う。
あぁ、なんて美しいのだろうか。
霞む思考の中で公爵はぼんやりと思った。
一度瞼を下ろし、再度開けば。
「やぁ！」
「……」
フードを被った誰かが頭の上で自分を見下ろしていた。
目を瞬いた公爵はまだ眠っている領域のある脳内で思考した。
声色から見れば男性だろう。
真下から見るゆえにフードに被っているが彼の顔立ちはわかる。
それは、身体の持ち主の記憶の中で確かに覚えがあった顔だ。
「魔術師マーリンか」
「おや？ 公爵くんに認識されているとは非常に光栄だよ」
にこりと笑ったフードの男性──マーリンは手を差し出した。
しかしその手を取ることもなく、公爵は自身の力で起き上がる。
といっても、地に手をついてただ起き上がっただけだが。
だが、起き上がった公爵の目に入るのは美しい薄紅色の花々が咲き誇る絨毯である。
どれだけの言葉を知っていたとしても、この目に映る美しさを説明できる言葉はないだろう。
それほどまで美しい光景だった。
「気に入ったのかな？」
「……そうだな。ひどく美しい場所だ」
「でも毎日だと流石に飽きてくると思うけどね」
背後から掛けられた声に肯定の言葉を述べればその回答。
毎日、ということは十中八九この場所は幽閉された塔の中だというのだろうか。
諸説あるがマーリンはヴィヴィアンによって脱出不可能な塔の中に幽閉された。
理由としては英雄色好むゆえに美しい湖の乙女に言い寄り反感を買ったり、逆に湖の乙女から愛され過ぎてだったり。
まぁ真相はどうあれ湖の乙女によって稀代の魔術師は閉じ込められたのだ。
と、話が反れたがここは幽閉された塔の中の可能性が非常に高いのである。
「魔術師マーリン、いくつか問いたい」
「構わないよ。私で答えられる範囲であれば、公爵くんの悩みを解決して差しあげよう。お礼？ あぁ気にしなくていいよ！ 君の身体の持ち主には色々とお世話になったからね」
主にこっそりと実験室を使わせてもらった件だけど。
と、悪びれもなく溢す夢魔との混血の言葉に公爵はひくりと顔をひきつらせた。
ルイス、お前の預かり知らない場所で勝手に実感室を使用されていたらしいぞ。
Rejection side story : Fast Hassan & Lewis→←Side story : Vivian & Loholt - Two
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翔べないペンギン(プロフ) - 爆死なうさん» コメントありがとうございます。そういただけますと大変嬉しいです。拝読いただきありがとうございました。 (2021年2月16日 8時) (
レス) id: 968bf19702 (このIDを非表示/違反報告)
爆死なう - 素敵な作品をありがとうございました。 (2021年2月15日 0時) (レス) id: baaad41788 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：翔べないペンギン | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Information/
作成日時：2020年12月6日 18時
