Eighty-two ページ36
バッキンガムが白亜の城の最上階に辿り着いたのは全てが終わった後のことだった。
立香達が聖杯を回収したうえで特異点の原因を修復を完了。
ゆえに、強制的に座へと戻そうという抑止の力も働き始めているため、最早彼は足元が消えかかっていた。
辿り着いた王の間にはいたのは二人。
「王よ、お下がりを。此処が王の御前だと知っての狼藉か？ 西の拠点ではしてやられたが、今回は同じ手を通用するとは思うな」
一人は鎧に赤々とした液体を付着させた円卓の騎士の一人、アグラヴェイン。
「よいアグラヴェイン。既に異邦のマスターもいない。ゆえにこの者ももう時期消えるだろう。放っておけ」
そしてもう一人は玉座にて来訪者を見た獅子王、アーサー。
他の円卓の騎士達は先程までの戦いで全員敗れ、座に戻っていた。
「……王が、そう仰るのなら」
不服そうにバッキンガムを見据えたアグラヴェインに対し、バッキンガムはいつもの調子で戯けた様子で笑った。
「流石獅子王殿。全てお見通しと見える。御覧の通り、このざっ、ゴホッゴホッ」
身を前に屈めるほどの激しい咳。
胸を押さえていない方の手で口元を押さえるが、溢れ出る程の血液が白亜の城の最上階を汚す。
続く咳をどうにか落ち着かせたバッキンガムだが、口からヒューヒューという喘鳴が漏れ出ていた。
もう時間はほぼない。
ゆえにバッキンガムは羽付き帽子を外し、恭しく獅子王にお辞儀をする。
「ブリテンの王、アーサー王に拝謁します。我が名はジョージ・ヴィリアーズ。バッキンガム公爵の爵位を我がイングランド王により下賜された者だ」
「そうか。ではバッキンガム、貴様に問う。全てが終わったというのに、何用でここに来たというのだ？」
じっとバッキンガムを見据える目は翡翠のように美しい瞳だが、意図を探ろうとしている目でもあった。
本来であれば王の許しを得てから被り直すものなのだが、失礼と一つ謝罪を入れてからバッキンガムは羽付きの帽子を被り直し、その二つの翡翠を見つ返した。
「我が
「ほう？ その言葉とは？」
アーサー王の問いかけに対し、バッキンガムはルイスと一言呟くとゆっくりと自身の緑色の瞳を目蓋の裏に仕舞った。
あぁ、この約束事はどうにか果たせた。
既に限界点を優に越しているにも関わらず、彼は言葉通り死ぬ気で此処まで持たせていた。
ゆえにもう彼が表に出てくることはもう、ないだろう。
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翔べないペンギン(プロフ) - 爆死なうさん» コメントありがとうございます。そういただけますと大変嬉しいです。拝読いただきありがとうございました。 (2021年2月16日 8時) (
レス) id: 968bf19702 (このIDを非表示/違反報告)
爆死なう - 素敵な作品をありがとうございました。 (2021年2月15日 0時) (レス) id: baaad41788 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：翔べないペンギン | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Information/
作成日時：2020年12月6日 18時
