Eighty ページ34
毒と呪いに身体を蝕まれながらも必死にその命を幾日も繋ぎ止めていたバッキンガムは、ある日突然御老人が現れるや否や小脇に抱えられた。
突然の出来事に目を白黒とさせるバッキンガムは、御老人にどうしたのかと問うが何も答えはなく。
むしろ自分が御老人を抱えるべきでは？ という主張を飲み込んでいれば瞬きの合間に場所が変わっていた。
「え？」
暗い場所から一転して、明るい場所。
毒と呪いのため視力が落ちている彼の目には正確な場所は不明、
だが、白い壁のようなものが霞む視界に見えた。
しかしどういうことだろうか。
何故か戦が起きていた。
周囲から聞こえるのは合戦特有の雄叫びと断末魔と金属音、そして血潮の臭い。
眉間に皺を寄せ、どうにか視力回復に専念していれば頭上より老人の声が降り注ぐ。
「我は約束を守らねばならぬ。汝も、汝の約束を守られよ」
どさりと地面にバッキンガムを落とした御老人は歩き出す。
一歩一歩、進むにつれて御老人の姿形が変貌していくではないか。
それは死を背負っていると言っていいだろう。
重装備の黒々とした甲冑、背からのため不明だがおそらくハサン特有の砂塵避けの仮面をその顔に装着しているに違いない。
彼が進むにつれて辺りに砂埃が巻き上がる。
気が付けば砂嵐の中で、バッキンガムは座り込んでいた。
"公爵！ 公爵！ 御無事ですか!?"
ふと意識を取り戻せば自分の内側から久しく聞いていない声が聞こえる。
それほど離れていなかったというのに、随分と彼の声が懐かしいと感じる自分がいて。
自然とバッキンガムの口角が上がった。
「あぁ。久しいなルイス。無事かどうかという問いは、愚問だろう？」
"申し訳ありません公爵、ですが"
「気にする必要はない。だが、どうやら貴殿との約束だけは
よろよろと力なく立ち上がったバッキンガムは、鉛のように重い身体で足を一歩一歩と踏み出し進んでいく。
砂嵐のベールのお陰で敵味方とも、彼に対して誰も気付かない。
いや、気付く必要もないだろう。
彼の顔色は最早青白さを通り越して土気色。
その命の灯火がもう少しで消え失せるということは誰が見てもわかることだろう。
ゆえに誰も彼に見向きをしない、気付かない、気付けない。
そこに何かしらの別の力が働いているのだが、決して誰が手を貸しているかはバッキンガムはわからないだろう。
東の森にて戦況を見やる、湖の乙女の計らいだということに。
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翔べないペンギン(プロフ) - 爆死なうさん» コメントありがとうございます。そういただけますと大変嬉しいです。拝読いただきありがとうございました。 (2021年2月16日 8時) (
レス) id: 968bf19702 (このIDを非表示/違反報告)
爆死なう - 素敵な作品をありがとうございました。 (2021年2月15日 0時) (レス) id: baaad41788 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：翔べないペンギン | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Information/
作成日時：2020年12月6日 18時
