Seventy-seven ページ31
ちょっとした茶番劇を二人で繰り広げていたのだが、彼はふと顔に影が出る。
「魔術師マーリン、俺はこれからどうなるのでしょうか」
「ん？ そうだねェ……。うん、しばらくは待機だね」
「待機、ですか？」
予想しえない回答に目を丸くさせて、自身を見下ろす花の魔術師を見上げる。
「そう、待機。機を見て君を公爵くんの元に返すよ」
「公爵の元に？ そういえば公爵はどちらに？」
「公爵くんなら別のところでとある人物から私と同じような説明を受けているはずだよ」
にこりと魔術師は笑って続ける。
「いやぁ、しかし面白かったよ。君の所有権を競って仁義なき戦いが別のところで勃発していてね。まぁ私はその光景をこっそりと覗かせていただいたのだけど、実に愉快で愉快で。まぁ見事私のところに収まって公爵くんはとある人物のところへと送られるようになったんだけどね」
「え？ 俺の所有権？」
何やらどこかで血みどろの争いが勃発していたらしい。
突拍子もなく言うマーリンを間抜けな顔で彼は見上げたのだが「おっとこの話は内緒だったか」と悪びれもなく内緒の話を彼に聞かせたマーリンは、更に続けた。
「だから心配無用さ。まぁ、呪われてたり毒に服してたりするけど、彼かなりタフだし、大丈夫大丈夫。たぶん」
「え、たぶん？ 公爵大丈夫なのですか!?」
思わず起き上がり笑みを携えたままの魔術師に詰め寄るが、ただ「大丈夫、たぶん大丈夫」と言うだけ。
いやだからその“たぶん”がかなり心配なのですけど!!
「っ……」
感情が昂ったため、そして動いたため。
思わず苦痛に顔を歪めた彼に、マーリンは肩を押して花々の絨毯に寝かせる。
「ほらほら横になって。無茶は禁物だよ。さっきも言ったけど、君も多少は呪いの影響を受けている。下手したら君の方が先にぽっくり逝ってしまうよ？」
噂では人類最古の王であるギルガメッシュも過労で死亡したことがあったらしい。
同じ道を歩むのは些か、いや些かどころかかなり不名誉であるため彼は大人しくマーリンの指示に従った。
「そうそう。そうしていればいいよ。そのまま時がくるまでしばらく休んでいたらいい。時が来たら、その呪いの禍に君自身も否が応でもその身に受けなければならないのだから」
穏やかに言うマーリンの言葉を耳に、彼は頷いた。
少し動いただけで息が詰まる程の激痛。
おそらくあの感覚をバッキンガムは今も味わっているのだろう。
御無事でと彼は願う。
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翔べないペンギン(プロフ) - 爆死なうさん» コメントありがとうございます。そういただけますと大変嬉しいです。拝読いただきありがとうございました。 (2021年2月16日 8時) (
レス) id: 968bf19702 (このIDを非表示/違反報告)
爆死なう - 素敵な作品をありがとうございました。 (2021年2月15日 0時) (レス) id: baaad41788 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：翔べないペンギン | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Information/
作成日時：2020年12月6日 18時
