Seventy-four ページ28
既に宝具は発動された。
即死の効果は半々の確率にてバッキンガム自身に降り注ぐ。
しかし、今回はどうやら"運が良い"らしい。
近衛兵達の誰もバッキンガムにその銃口を向けることなく隊列したまま、バッキンガムの指示を待っていた。
口角を上げ、近衛兵達に遅れている村人達の避難を命じる。
「人民の避難が最優先にせよ。残った人員は全て守りに徹せよ」
──Sir,yes sir！
声なき声で応える近衛兵達。
隊列を組んだ内の何名かは村の方へと回る。
逃げ遅れている村人達を回収し、洞窟の方へと誘導。
残った人員は今にも空より迫る光るそれに対し、防護隊形の隊列を組んで佇んでいた。
遠目から見れば空よりきたる光の柱は、まるで優しく撫でるかのように宮殿へと触れたように見えるが実際は凄まじい程の熱量と破壊力を持ってして宮殿を壊していく。
ガラガラと崩れ落ちてい宮殿を、耐久を上げるためにバッキンガムは全魔力を注ぎ込む。
一人、一人と近衛兵達も輝き放つそれにより消えゆく。
既に宮殿は原型を留めておらず。
バッキンガムは一人、その光に対して抗っていた。
発動されたと同時に蝕み始めた呪いに、口の端から血を流すも懸命にこの村を守るためにその二本の足を地に沈ませながらも、耐える。
トレードマークである羽付き帽子は焼け切れ、上品な刺繍を施されたシルクのペリースも既に跡形もなく燃え尽きていて。
身に纏っていた豪華絢爛な紳士服も、辛うじて布を纏っている程の既にボロキレにへと変貌を遂げていた。
両手を突き出し、その手で食い止めるため光に触れる。
肉の焼ける臭いが鼻腔を掠めるが、決してその手は下げない。
自身の宝具のお陰で防御力は上がっているとはいえ、下手をすれば腕が弾き飛ばされる可能性も否めない。
それでもなお、村を守るために彼は堪え続けるだろう。
「ッ……、やはり我が国の大英霊。だが、此方も負けられないのでねッ！」
全魔力を焼け爛れている両の手に込め、押し返す。
圧倒的力の前では微々たるものであるが、それでも持ちこたえているバッキンガム。
少しずつ光が弱くなり、そして四散した。
残ったのは建物が全壊した西の村と、一人佇むバッキンガム。
「すまないね藤丸、ルキウス兄君。約束は守れそうには──」
がくりと崩れ落ちた。
限界を優に越していた彼は、抗うことなくその目を閉じる。
その側を誰かが降り立つとは知らずに。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 8人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
翔べないペンギン(プロフ) - 爆死なうさん» コメントありがとうございます。そういただけますと大変嬉しいです。拝読いただきありがとうございました。 (2021年2月16日 8時) (
レス) id: 968bf19702 (このIDを非表示/違反報告)
爆死なう - 素敵な作品をありがとうございました。 (2021年2月15日 0時) (レス) id: baaad41788 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：翔べないペンギン | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Information/
作成日時：2020年12月6日 18時
