Seventy-two ページ25
平穏というものは突然壊れるものだ。
いや、元々が仮初の平穏だったのかもしれない。
だが確かにそれは、村の人々にとっては平穏だったと誰もが言うであろう。
西の村から去った立香達一行を見送って数日。
村の警備をしつつ、構ってほしいとせがむ子供達の相手をしながらバッキンガムは軽い勉学を教えていた時のことだった。
「！」
とてつもない程の強大な魔力を上空から感じ、見上げれば光り輝く何かがゆっくりと降りてきているではないか。
いや違う、ゆっくりではない。
高速で降下しているのだがあまりにも巨大なために目の錯覚でゆっくりと見えるのだろう。
目を大きく見開くバッキンガムの目の色は緑から青へと変わり、小さく何かを口ずさんだ。
ロンゴミニアド、と。
「っ、避難を！」
青い瞳のままの彼は声を荒げる。
何度も見てきたことがあるため知っている。
抑えていたとしても建物を壊す程の威力がある宝具。
それが何の枷もなく放たれ此方へと向かってきている。
確実に消しにきている、理解には時間はかからなかった。
滅多にそのようなことをしないため、驚いた子供達へ急ぎ洞窟へ避難をするように指示を出し、彼は拡張機で洞窟への避難の指示を伝える。
そうしている間にも光り輝くそれは刻一刻とこの村へと降りたとうとしている。
苦虫を噛み潰したような表情をした彼は、キャメロットがあるであろう方向を見た。
アーチャーのように凄い視力がある訳でもなく、何処かの英霊のように千里眼のスキルがある訳でもない。
「……アルトリア」
だが、確かに彼は彼女の明確な程の殺意を感じ取ってしまったのだ。
いや彼女にとってはこれは殺意ではなくただの粛正なのかもしれない。
しかし、彼にとってはそれはどちらも大差なかった。
「まさか俺が君の宝具を受ける側になるとは、思いもしなかったよ……」
いつもその光放つ輝きを彼女の後ろで見ていたというのに、此度は真正面から受ける。
ある種の感慨深い気持ちになりつつ、怯えて動けない人達を見やり、それからもう一度その光り輝く切っ先を見据えて、彼は頷いた。
「御安心ください。必ず、あなた達を助けますから」
穏やかに笑んだ彼は恐怖で顔が強張っている子供の頭を優しく撫でると再度避難をするように指示を出し、自身は駆け足で広場へと向かう。
この村で稼働させていた投影魔術によって作り出した全ての現代の利器達を解除し、彼は広場の中心で黄金に輝くそれを見上げ、見据えた。
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翔べないペンギン(プロフ) - 爆死なうさん» コメントありがとうございます。そういただけますと大変嬉しいです。拝読いただきありがとうございました。 (2021年2月16日 8時) (
レス) id: 968bf19702 (このIDを非表示/違反報告)
爆死なう - 素敵な作品をありがとうございました。 (2021年2月15日 0時) (レス) id: baaad41788 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：翔べないペンギン | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Information/
作成日時：2020年12月6日 18時
