一緒に 何を 食べようか 【袋井満】

65　似たもの同士 ページ29

＿似たもの同士は惹かれ合うというけれど、ミチルくんとAさんは正反対ですよね＿

眉「…………」

私、瞳島眉美は先輩くんの言葉を思い出しながら不良くんが淹れてくれた紅茶を嗜んだ。
目線の先にはキッチンで料理を作っている不良くんとそれを眺めているAさんが居る。あの二人は本当に仲がいい。

『あ、辛いのやだ』

満「美味いだろ」

確かに正反対だな…
Aさんは辛いのが苦手で不良くんは辛いのも美味しく食べる事ができる。性格も雰囲気も見た目も、二人とも美人であるということ以外の共通点が少ない。

眉「…ねえ、二人とも」

満「『ん？』」

眉「…お互いの死体を、好きにして良いよって言われたら……どうする？」

丁度、昨日ドラマでそんな話を見た。二人は怪訝そうな視線を私に向ける。少し間が開いて不良くんが口を開いた。え、答えてくれるの？

満「そうだな…Aの身体を、肉も骨も全部混ぜて料理作ってやるよ。誰にもやらねえ。自分一人で全部食う」

不良くんは「今日の晩飯にハンバーグ作ってやるよ」みたいなノリで凄まじいことを言い出した。
こっっわ。

満「心臓は砂糖漬けにでもして保管しとくか」

『ホルマリン漬けじゃなくて平気？』

え、そこ気になる？料理にされるのは気にならないの？

『というか、その料理美味しいのかな…』

満「俺が作るんだぞ？美味いに決まってんだろ」

『ふふっ…そうだね』

眉「その話を聞いて平気で笑っていられるの凄いと思う」

不良くんとAさんはクスクスと笑っている。
冗談だとは思うのだけれど、不良くんが言うと冗談に聞こえない。
じ、じゃあ、Aさんは？

『私？私は…骨と革でヴァイオリンでも作るかな』

満「…それ、音出せんのか？」

『私が弾くんだよ？いい音を奏でられるに決まってる』

満「……そうだな」

『あ、でもそしたら内臓や筋肉が残るのか…』

満「…燃やすか？」

『うーん…土に埋めてそこに薔薇の花でも植えるよ…満くんの血や内臓から栄養を吸って、真っ赤な花を咲かせるの』

こちらもこちらで凄まじいことを言い出した。
この二人…なんなの？

『きっと、甘い匂いがするんだろうね。満くんよくお菓子の甘い匂いがするし』

満「そりゃ楽しみだな」

歪んだ、純愛。
どこかのクサイ恋愛小説で読んだ言葉が頭に浮かぶ。それと同時に、多分、この二人のことを言っているんだなと思った。


……先輩くん、この二人は惹かれ合うべくして惹かれ合った、似た者同士だよ。

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