好きすぎて忙しい。【Bs39】

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39side


室内練習場でマシンを相手にバットを振り続ける。
思いのほかこういう時ほど良いスイングが出来ているようで自分の中で満足する当たりがいつもより多い。



53「池ちゃんまた明日ね〜」


61「お疲れ様でーす」



宜保さんと茶野さんの声ではっとして周りを見渡した時、残っているのはもう俺だけだった。
あんなにもやもやしてたのに野球をしてると少し穏やかな気持ちになれている。集中力とは素晴らしい。
そろそろ帰ろう、Aちゃんに会えるといいな、まだ帰ってないかな、と思いながら練習場を後にした。





荷物をまとめて駐車場へ向かうと、そこにはもう涼斗さんの車はなかった。
はあ、と大きなため息をついていると誰かに肩を叩かれる。



63「どうしたん、ため息ついて」


39「そういちさん、あの、涼斗さんってもう帰りましたかね？」


63「来田？さっきまでいた気がするけどもう帰ってる？」


39「車はもうないっすね」


63「じゃあさすがに帰ってるっしょ笑」


39「そうですよね、分かりきったこと聞いてすいません」


63「ん、まあ別に謝ることでは無いけど」


63「気をつけて帰れよ」


39「うっす」


そういちさんは軽く手を振って颯爽と自分の車へと向かっていった。
そういちさんが車に乗り込むまでぼーっと目で追い、車が走り出したのを見て、自分の足もとへと視線を移す。

自分も車へと向かいながら、結局何も話してくれなかったなあと思い、また1人で大きなため息をついた。
多分涼斗さんと帰っただろうし涼斗さんは何でAちゃんが俺の事を避けるのか知ってるのかな。
それを知ってて涼斗さんは俺とAちゃんが話すように促したのかな。

俺、Aちゃんと1日うまく話せてないだけでもう限界だ。
どうしよう、これからも話せなかったら、理由を教えてくれなかったら、

静かな所にいると、マイナス思考が加速するのを感じて俺は1度家へと帰り、ストレス発散と言えば熱唱やろ、と安直な発想から、とぼとぼと歩いてカラオケへ向かった。

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