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帰り道 ページ19



今日の分のタスクも終わり、ペットボトルのカフェラテの最後の一口を口に含む。
時計を見ると気づけばすっかり夕方に近づいていた。
お兄ちゃんと帰ると約束していた時間まであと少ししかない。
私は急いで駐車場へと向かった。



38「おつかれ」


「お兄ちゃんこそ練習おつかれさま」



労いの言葉を交わしながらドアを開け車に乗る。
車の中は冷えていてお兄ちゃんも私も少し肩がぴん、となった。



38「池ちゃんとは話せたん?」



エンジンを掛けながらお兄ちゃんは言った。
声色は心做しか優しい。



「いや、」


38「このまま帰っていいん?」



お兄ちゃんは帰るべきじゃない、待って話をするべきだと言いたげな様子で私に尋ねる。
直接言葉にしないのはお兄ちゃんの優しさか。



「まだ陵真くん練習してるってこと?」



わかっているはずのことを確認の意味を込め、質問で返す。



38「俺が見た時はまだバット振っとったで。」


「そっか」


38「俺は全然待つけど?」


「いや、いいよ。帰る」


38「ふーん」



お兄ちゃんは不服そうだが、ゆっくりとアクセルを踏んだ。
車が舞洲を出たあたりで、私に言い聞かせるように話し始める。



38「朝さ、俺来ていきなりすごい勢いで話しかけてきたで」



そう言って少し呆れたように笑う。



38「どうせ今日なんも喋ってないんやろ」


「お兄ちゃんには関係ないでしょ、」



つい強い口調になってしまった。
言った後にはっとしてお兄ちゃんを見ると、お兄ちゃんは真っ直ぐ前だけを見ていて、私の口調は気にしてないようだった。
しかし、口調は気にならずとも言ったことは軽く怒らせてしまったようで、お兄ちゃんは真剣な目と声で返事をする。



38「関係ある。大事な妹とチームメイトやし。池ちゃんなんかAと話したっぽいあとも表情暗かったしな」


38「何があったんかとかAが何考えてんのかとか、よく分からんけどさ、人を傷つけることだけはしたらあかんで」



ちょうど赤信号に差し掛かったところでお兄ちゃんは優しい目をして私を諭すように頭を撫でた。

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なつ(プロフ) - 閲覧垢と分かれば基本的には通しています🙆🏻‍♀️ (2月6日 19時) (レス) id: 581386eaf3 (このIDを非表示/違反報告)
ぴょる - xのフォロリク通に当たって何か条件等ありますか…? (2月5日 19時) (レス) id: 61cb40822f (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - 来田くん私も大好きなので意図的に登場多めにしてます笑拙い文章ですがこれからも読んでいただけると幸いです💘 (1月29日 18時) (レス) id: 581386eaf3 (このIDを非表示/違反報告)
SFF(プロフ) - なつさん» そんな…!嬉しすぎるお言葉ありがとうございます!!🥹ほんと素敵で、兄がこんな感じだったらなと思いながら読ませていただいてます!笑 なつ様の書くオリックスJr 最高です❤️‍🔥 (1月29日 17時) (レス) id: dc6e40d3df (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - えちょっと待ってください、、私主さんの作品めっちゃ好きで読んでます、、!!そう言って貰えて本当に嬉しいです😭来田くん私の完全理想で優しさ10割で書いてるので最高って言ってくださって本当に有難いです、!!! (1月29日 15時) (レス) id: 581386eaf3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:なつ | 作成日時:2024年1月25日 23時

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