【ヘタリア】吸血鬼の捕虜になりました。

闇で耽る夢 ページ31

おかしな夢を見た。



俺がガキの頃の夢だったと思う。
まだ兄さんと“普通の兄弟”のように口を聞いていた時の＿＿＿＿夢。




『お兄ちゃん、なにしてるの？』



『うん。』



背こそは向けて作業を進めているも、言葉尻に優しさを残す背中




『お前にくれてやろうと思って、コイツを』



と、鋭利な。
しかし幼い頃の俺には貴重な、武器であった。



そう、よく研いでくれた。



昔には、戻れないのだろうか。




どこで間違えたのだろうか
俺も、お兄ちゃん、も。




＿＿＿＿サー...さん、アーサー......ん




「アーサーさん！......大丈夫ですか？」



「A？......あ」





壁に凭れて眠ってしまった。
だからあんな悪夢を見たのか


彼女は、いつから俺の傍らに居てくれたのだろうか、心配そうに俺を見ているが＿＿＿＿



「あの、お兄ちゃんって...たまに言ってましたよ」


「.........」





やっぱり。引き摺ってるとしか思えねえよな
夢にまで出てくるんだ。



「兄さんの夢を見てた。昔の夢を」


まだ夢の中に居るような錯覚が
彼女の姿を揺らす。



「......こんな事言っていいのか分からないんですけど、」



迷うように言葉を切って
俺を見詰める。


「良いよ。気になるだろ？」


「…...すごく＿＿＿＿

穏やかな顔、してましたよ」




＿＿＿＿






どうしろって、俺に...


あの日に戻れるなら俺は兄さんとあんな場所に行かなければ良かったのかも知れない。



だけど、今更なぜそう思うのだろう。



あの日から俺達は 普通の感性、感情を無くした筈だったのに




...と、不意にAを思う。
コイツに会ったから俺はまた、自分を取り戻せたのかも知れなかった。




だとした...ら......？

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