第２２話 その幹部、誘う。 ページ25
「あれ、噂のメイドちゃん？」
「陛下。ご機嫌麗しく」
「あーいいよ、そういうの」
いちいち会う度に、この真っ黒なメイドは丁寧すぎるお辞儀と挨拶をするもんだから、不気味でさえある。見た目も相俟って、尚更。
「今って忙しい？」
「今、でございますか」
傍にあるのは華美なカートと白いティーセット。誰にだろ、スマイルかな？
「先程、スマイル様に紅茶をお運びした後ですので、しばらくは」
「じゃあ、じゃあさ」
俺につきあってよ、なんて微笑んでみせる。ほら、表情が……1ミリも変わらなかった。は？
「何か、資料が必要なのでしょうか」
「え、いや」
「夕食までには少し時間がございますが、何か軽食か、小腹を満たすものをお運びしましょうか」
「ちが」
「それとも、また幹部様の何方かに、粗相した使用人を独房に運んで」
「違う違う違う！！」
違うのですか、と言っている割には首も傾げない。黒々とした片方だけの目が、俺に向けられている。
「じゃあさ、夜、そうだな〜10時くらいに、俺の所に来てくれない？」
「よる、でございますか」
それが何を意味するのか知ってるのかは、どうでも良い。従わなかったらどうなるか、知ってるよね。たまには変わり種も、面白いかな。
「申し訳ございませんが、夜は、」
「なに？断るの？」
「違います。陛下、私の魔法は“影”に関する事でございます」
「それは知ってる。スマイルがその件に関して世話になったね」
「恐縮でございます。ですので、夜は、」
「ねぇ、まどろっこしいのキライなんだけど」
ぐ、と押し黙ってしまった。あんまり長引くとロルに見つかるんだよなぁ。早く返事しろよ。
「夜は、私の魔法の、魔力の供給が延々に続く状態になります。となりますと、起きていると、過剰摂取状態が継続してしまいまして……」
「あ、あー……それはキツイ」
魔法の系統によっては自然物から供給できるものもある。キャパ次第だけど、過剰摂取状態は酔いに近い。それに当て嵌まるのか。へぇ。影に関する魔法ってレアだから、ちょっと知れてよかったかも。
「じゃあいいや」
「お役に立てず、申し訳ございません」
「いいよ。お前の魔法の事、知れて面白かった」
また教えてよ、と笑って見せると、自分の分かる範囲ならと答えてくれた。あ、でもコイツ、あんまり俺等に会っちゃいけないんだっけ。
第２３話 そのメイド、試す。→←第２１話 そのメイド、説明する。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 497人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紅鴇ﾍﾞﾆﾄｷ@pc垢 - すみれいんさん» コメントありがとうございます！主人も自分も怖がらずに接してくれた＋ご主人に優しいメイド！という認識の結果、めっちゃ懐いちゃったグリューンです。 (8月21日 7時) (
レス) id: 34f7b3b145 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - グリューンが可愛いと思ったのはきっと私だけじゃないと思います！！実際にいて欲しいと思っちゃいました！！ (8月20日 4時) (レス) @page48 id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
紅鴇ﾍﾞﾆﾄｷ@pc垢 - みゅんみゅんさん» コメントありがとうございます!!!!凄い、古参読者様だ……!!今回ついに最後の一人と絡みます!! (5月15日 23時) (レス) id: 34f7b3b145 (このIDを非表示/違反報告)
みゅんみゅん(プロフ) - ５話くらいの頃からずっと読ませていただいています！だんだんと夢主との絡みが多くなってきていてワクワクします、更新楽しみにしてます！ (5月14日 14時) (レス) @page30 id: 1c8f9011d0 (このIDを非表示/違反報告)
紅鴇ﾍﾞﾆﾄｷ@端末垢 - ほっとミルクさん» 外見的コンプレックスが今回の要素でもあるので、夢主の立場と性格生い立ちその他を混ぜた結果、包帯ぐるぐるメイドになりました( ´∀`)応援ありがとうございます！ (2023年4月6日 11時) (レス) id: 15e99861f0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
