三匹目の子兎_2 ページ26
しかしこいつは女で、女の口からそういう言葉が出てくると、どうしたって恋愛じみた響きを感じちまい、苦い気持ちが広がって来るのだ。そんな言葉をかけられたって…困るだけだ。俺は恋愛なんてしている暇はねえと思っているし、必要ない。しかしその癖、裏の無い純粋な笑顔で直接言われてしまうと、どうしようもなくぴくりと反応し、意識せざるを得ないのだ。
「んー、でも」
葛城は少し困ったように眉尻を下げて、尚もにこにこと笑う。
「だって金城くんかっこいいし、面倒見いいし、素敵な人じゃないですか」
「うんうん」
「わかる」
「………」
言葉に詰まるのは俺の番だった。世辞でもなんでもねえストレートな台詞。「お、まえなあっ」ようやく声が出たけれど、ひどく焦った声色だった。
「恥ずかしくねえのかよ、それ」
「え、どうしてですか?」
きょとんと小首を傾げる葛城の目はまっすぐ俺を見つめていた。
「だって大好きですもん、仕方ないじゃないですか」
「……っ」
まるで心臓に言葉が突き刺さったかのようにどくんと一つ脈打って、
「あ、お電話」
葛城のポケットから携帯電話が鳴り響く。「ちょっとすみません」と言って携帯を取り出しながら、葛城は部屋を出て行った。
それを目で追った双子は、黙って様子を眺めていた静けさから一転、
「ねえねえ剛士くん」
「金城さん金城さん」
ずりずりと俺ににじり寄ってきやがる。表情はどこかにやついた笑みを浮かべ、目が悪戯っぽく光っていた。
な、と俺はギターを抱えたまま自然と後ずさる。
「何だ」
「金城さん、照れてます?」
「ああ!?」
驚いて手入れ道具を落としてしまう。それを見て双子は顔を見合わせ、一層笑みを深めやがる。
「ちげえよ。照れ、…んなわけねえだろ」
「A可愛いもんね」
「うん。ちょっと悔しいけど、Aさんならいいかな」
「お前ら、話聞けよ」
二人は揃って俺をじいっと見つめ、視線にぐいっと睨み返せば、嬉しそうに笑い、息の合った調子で台詞を被せた。
「応援します、金城さん」
「応援してるよ、剛士くんっ」
だから、ちげえって言ってんだろ!!
一喝する俺の顔が熱いのは何故なのかなんて、ちっともわかんねえ。…わかんねえと自分に言い聞かせた。
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まほし(プロフ) - 彩乃さん» お返事おそくなりました(汗 イラストいただき、ありがとうございました!!おはなしも気に入っていただけてよかったです〜。良ければこちらこそ、またお願いします^^楽しみにしています! (2017年4月2日 17時) (レス) id: 98138b6672 (このIDを非表示/違反報告)
彩乃 - ふぁぁぁぁイラスト使ってくれてありがとうございます!!ヤバいです素敵です全然大丈夫です!!!!!!!!普通に嬉しいです。ありがとうございます〜!!私が想像してた通りというか、想像以上だったので嬉しいです…!!ありがとうございました…!!良ければまた描きたいです!! (2017年3月31日 17時) (レス) id: 6d74871b62 (このIDを非表示/違反報告)
まほし(プロフ) - B−PRO大好きおじさん(笑)さん» 最初からずっと…!ありがとうございます!!これからもよろしくお願いいたします。そして北門さんお誕生日おめでとうございますっ!! (2017年3月29日 22時) (レス) id: 98138b6672 (このIDを非表示/違反報告)
B−PRO大好きおじさん(笑) - みじかいゆめを最初からずっと見てます!!!倫くん誕生日おめでとう!! (2017年3月29日 15時) (レス) id: 69007943fd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まほし | 作成日時:2017年3月26日 10時