《B-PROJECT》みじかいゆめ3

三匹目の子兎_1（剛士） ページ25

「金城さん、大好きです」

唯月はいい。

「剛士くん、大好きっ」

遙日もわかる。

「金城くん、大好きですー」

だがこいつだけは理解不能なのだった。双子と並んでちょこんと座り、にこにことこちらを眺めている。はあとためいきをついてみせるけれど、葛城は気にするそぶりも見せやしない。

KiLLER KiNGマネージャーのこいつは気が合うようでえらく双子と仲が良く、プライベートでもよく一緒にいる。双子は双子で俺の部屋に来て何ともなしに喋り倒したり昼寝したりと気ままに過ごしていたから、必然、葛城も双子にくっついて俺の部屋にやってくることが多いのだ。
俺よりいくつか年が上らしいけれど、そうして遙日や唯月と共にあれやこれやと盛り上がる様子を見ているととてもそうとは思えねえ。
別に、葛城が双子と仲が良かろうが、俺の部屋に入り浸っていようが、関係ねえとは思っている。遙日や唯月はそのまま寝ちまってベッドを占領する事も多々あるけれど、流石に葛城は自分の部屋へと帰っていくし、そこまでの迷惑をかけられているわけではないからだ。
…しかし、双子に便乗して、その、そういうことを平然と笑って言ってきやがるところだけは、どうにかしてほしい。

「剛士くんっ、遊ぼうぜー」
「見りゃわかんだろ。暇じゃねえんだ」
「手伝います？」
「素人が触んな」

ギターの手入れをする俺の手元を覗きこんで来る遙日と葛城を一蹴するけれど、「ええー」と声を揃えて言うこいつらはへこたれない。

「つーかお前ら三人もいるんだったら自分の部屋帰って遊べばいいだろ」

冷えた声でそう言えば、きょとんと互いに視線を交わし合って、それからまたにこにこと屈託ない笑顔を浮かべて、唯月が口を開く。

「金城さんに遊んでほしいんです」
「金城くんが大好きだからー」

続けた葛城の言葉に、ギターの弦を拭く手が一瞬固まった。ちらりと見てみれば、唯月と遙日の真ん中で邪気のない笑顔を見せている。

「…お前な、それやめろ」
「へ？」
「年頃の女がそう簡単に言う言葉じゃねえだろ。やめとけ」

葛城はびっくりしたようにぱちぱちと瞬きをして、それから「うーん」と何だか考え込むような顔になる。
好き、だとか。別に変な意味が込められているわけじゃねえってことくらい、わかっている。唯月や遙日だって挨拶代りのようにことあるごとに言ってきやがるし、まあそれは、慕われてるっつーのは割と、満更でもないと感じる俺がいる。

三匹目の子兎_2→←kiss & make up_2

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す