《B-PROJECT》みじかいゆめ3

スタートライン_1（遙日：誕生日） ページ20

寺光遙日というアイドルと知り合ってからそんなに日が経っていないけれど、折角友達になって初めての誕生日なのだから、何かしら贈り物をしようとわたしは考えていた。
優柔不断な性格が災いし、予定していた一日では決めきれず、結局三日ほど悩みに悩んで選び抜いたプレゼントの小箱を前に、それでもわたしは更にそこで悩んでいる。

「むう……」

中身は、小さな金色の月をモチーフにしたアンクレット。実は一番最初に入ったお店で見つけていたのだけれど、もっといいのがあるんじゃないかと探し回ったあげく、最終的にこれに戻ってきたのだ。
遙日くんの綺麗な金髪と同じ色で、大好きなんだっていつも言ってるお兄さんの名前と同じ月の形。
遙日くんがこれをつけているところを見てみたい、と思ったから、これをプレゼントに選んだのだ。
だけど。

「なんだか決め手に欠けるんだよね……」

スタッフの休憩室で、わたしはひとりため息をつく。いろんなお店を回ってみたけれど、いまひとつ「これだ！」と思えるものには出会えなかったのだ。だから三日もかかってしまった。

多分それは、わたしがまだまだ寺光くんのことをよく知らないから。
たまたまレコーディングの休憩中に歌のことをお互い喋って、なんとなく意気投合して、その後、会うたびに挨拶し合ったり、たまにお茶しにカフェへ出かけてみたり、

『友達ってことでいいんじゃない？』

笑顔でそう言った彼と一緒にいることは楽しかった。寺光くんは思っていたより聞き上手で、わたしが仕事で悩んでることとか、好きなもののこととか、ついいろいろと喋りすぎてしまう。
だから寺光くんの趣味とかプライベートのことはそういえばあまり聞かないな、なんて今さらながら気がついたのだ。お兄さんの話だけは、よく聞くんだけど。

最初は、金髪という見た目に高いコミュニケーション能力、グループにいるときのにぎやかなイメージから、勝手にちゃらい人なんだって思ってしまっていた。だけどきっと寺光くんはそういう人じゃない。
じゃあ寺光くんは、どんな人なんだろう？
考えたときに、「お兄さんが大好き」と「聞き上手」以外に浮かんでこなくって。
何が好きなのか事前に調べておけばよかった。そうしていれば、買ってしまった後から本当に渡すべきかどうかこんなに悩まなくて済んだのに。

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