アー・ユー・キティ?(竜持) ページ1
竜ちゃんは、わたしにとってまさに弟的存在といえるだろう。
甘いものがたくさん届くキタコレの楽屋によくお邪魔しては、トモくんと三人でお菓子を頬張ることが多かった。キタコレは味覚が肥えてそうだから、差し入れも自然と美味しいものが届く。
「ほら、こっちも美味しいよ」
「ああ、うん。ありがと」
今日もこうして撮影前のキタコレの楽屋に呼ばれ、一緒にお菓子を食べていた。クロナッツという魅惑の食べ物を手にして一口かじれば、
「紅茶が欲しくなるね」
「あ、竜ちゃんおんなじこと思ってた」
呟かれた言葉に同意を示せば、「さすが」くすりと竜ちゃんは笑みを漏らした。
「あ、竜ちゃん、クロナッツが口についてるよ」
衣が口の端に付いていたので、付属のナプキンを手にして拭ってあげる。
「…ん」
「はい、とれたよ」
こんな風に竜ちゃんのお世話を焼くことが、わたしはすごく好きなんだ。
そんなわたしをじいっと見て、竜ちゃんははあとため息をつく。
「どしたの?」
「別に、今はそれでもいいけどね」
独り言みたいに呟いて、ぱくりとクロナッツの二口目を食べる。
「それ?」
「弟みたいだって、思ってるでしょ?僕のこと」
ああ。うん、そうだね。同意を返せば、はああとさらに大きくため息をつかれる。
「でもね、A」
今度は自分で口の端を拭ってから、竜ちゃんは自然な口調で言った。
「僕は君がお姉ちゃんみたいだからじゃなくって、好きだから一緒にいるんだからね」
クロナッツをかじろうとした口が開いたまま、止まる。竜ちゃんの言葉が正しく入ってくるには時間がかかった。
竜ちゃんは言葉を出した後、澄ました顔でクロナッツを頬張る。
「…どういう意味?」
「さあね。自分で考えてよ」
はぐらかすような言葉に戸惑いながら頷いて、食べかけたそれをかじる。うん、美味しい。ちらり、竜ちゃんを見れば、何事も無かったかのような顔でチョッパチャロスを取り出そうとしていたから、とりあえずわたしもいつも通りに振る舞うことにして、
「わたし、紅茶入れて来るよ」
「ありがと」
立ち上がり給湯ポットに水を入れようと外に出てから初めて、小さなどきどきが胸の内で鳴っていることに、気が付いた。それはまるで初めての感覚で、戸惑いと共に竜ちゃんの少しだけ大人びた表情を思い出して、なんだか恥ずかしくなってしまった。
(おわり)
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まほし(プロフ) - 彩乃さん» お返事おそくなりました(汗 イラストいただき、ありがとうございました!!おはなしも気に入っていただけてよかったです〜。良ければこちらこそ、またお願いします^^楽しみにしています! (2017年4月2日 17時) (レス) id: 98138b6672 (このIDを非表示/違反報告)
彩乃 - ふぁぁぁぁイラスト使ってくれてありがとうございます!!ヤバいです素敵です全然大丈夫です!!!!!!!!普通に嬉しいです。ありがとうございます〜!!私が想像してた通りというか、想像以上だったので嬉しいです…!!ありがとうございました…!!良ければまた描きたいです!! (2017年3月31日 17時) (レス) id: 6d74871b62 (このIDを非表示/違反報告)
まほし(プロフ) - B−PRO大好きおじさん(笑)さん» 最初からずっと…!ありがとうございます!!これからもよろしくお願いいたします。そして北門さんお誕生日おめでとうございますっ!! (2017年3月29日 22時) (レス) id: 98138b6672 (このIDを非表示/違反報告)
B−PRO大好きおじさん(笑) - みじかいゆめを最初からずっと見てます!!!倫くん誕生日おめでとう!! (2017年3月29日 15時) (レス) id: 69007943fd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まほし | 作成日時:2017年3月26日 10時