おかしなkiss_3 ページ29
低く、甘い響きが、わたしの体の自由を奪っていく。さっきまではしゃいでいた悠太くんとは、まるで別人のようだった。
…こんな悠太くん、わたし、知らない。その声音と、表情と、体勢と、全てがわたしの心臓を早める要因だった。
どきどきと、かつてないほどうるさく響く鼓動。
わたし、悠太くんに攻められている?
「ちょ、悠太くん、あの」
「証明してあげようか?Aちゃん」
肩のすぐ上あたりに押し当てられていた右手を、悠太くんはわたしのあごへと持ってきた。くい、と角度をつけて持ち上げられる。その手つきは、あまりに大人びていて。どこで覚えてきたの、それ、とちらり考えるもすぐにそんな余裕は無くなる。
「緊張してるの?かーわい」
くす、と怪しく微笑んで、悠太くんは顔を近づけてくる。心臓が爆発してしまいそうだった。抵抗なんてできるはずもなく、わたしはぎゅっと目を閉じる。
ふにっ。
柔らかいものが、触れた。…だけど、なんだろうこれ。人の唇にしては、柔らかすぎやしないだろうか。そっと目を開ける。そこには悠太くんの顔は既になく、わたしの唇には何かが押し付けられていた。
マシュマロだ。そう気づいて悠太くんに抗議の目を向けると、彼はにっこりといつもの可愛い笑顔で「びっくりしたでしょ?」と言ってくる。
…ほんとに、もう。わたしは小さく口を開けて、マシュマロをくわえた。それ以上何もなくて、ほっとしている自分がいた。だってそんなの、ばれたら社長に怒られるどころか、クビだ、クビ。
だけど、それだけじゃなくて、少しだけ、続きを期待していた自分がいたのかもしれない。残念な気分もそこには混じっているのだった。
「あれ?Aちゃんマシュマロ食べないんだよねえ」
「ん?」
「じゃあ、僕がもらってあげるっ」
悠太くんの言葉に瞳を動かしたとき、ピンクの髪の毛がふわっと揺れた。
ちゅ、と。
悠太くんはマシュマロごしに、わたしの唇にまで触れた。
それは一瞬だったけど、確かに温もりが残っていて、ああ、キスされてしまったと判断するには十分だった。
わたしの口から奪ったマシュマロを美味しそうに食べて、「このマシュマロ、一段とあま〜いね!」なんて無邪気に笑うものだから、わたしの顔はもう真っ赤だ。
悠太くんがコドモなんて、とんでもない。
ただお菓子好きの、よくはしゃぐ、大人の男なんだと、今日を境に認識を改める必要がありそうだった。
(終)
肉食あしゅくん、いいですよね…!!
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速水ヒロcv前野智昭love♪(プロフ) - 面白かったです!!ごうちん格好いい(*´∀`) (2018年7月10日 21時) (レス) id: 5e287a4c41 (このIDを非表示/違反報告)
織目亜華璃 - 帝人が!帝人が〜〜〜!ヤバイデス!!トゥンク!! (2017年4月29日 14時) (レス) id: cd6be38c23 (このIDを非表示/違反報告)
彩乃 - まほしさん» ですよね…!!はい、また携帯買ったらお知らせ致します(笑) (2017年2月27日 18時) (レス) id: 39f7ff3018 (このIDを非表示/違反報告)
まほし(プロフ) - 彩乃さん» Twitterって公式非公式いろいろ情報入ってきて楽しいですね。機会がありましたらぜひ〜^^ (2017年2月21日 23時) (レス) id: 98138b6672 (このIDを非表示/違反報告)
彩乃 - んんBプロプラス素敵ですね…!!!Twitterはまだ携帯持っていないので見るしかやってませんが、その内お話したいなぁ、とか…() (2017年2月20日 12時) (レス) id: 39f7ff3018 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まほし | 作成日時:2017年1月16日 13時