おかしなkiss_2 ページ28
「誰も頼んでないでしょ」
冷たく言い放つと、悠太くんはしょんぼりと肩を落として、クッキーの箱から一枚袋を取り出した。かさりと小袋を開け、両手で掴んでかりかりと食べ始める。だから、そんな可愛いかっこしても駄目だって。
これ以上太ったりなんかしたら、悠太くんの隣を歩けないでしょ。
「僕、Aちゃんと食べたくて持ってきたのに」
「駄目よ」
「すっごくおいしいから、Aちゃんに食べてほしかったのに」
「う…だ、だめだめ」
今度はこっちの情に訴える作戦か。さすがに心苦しくなってくる。いやいや、体型のためには心を鬼にするのよ、わたし。すると通用しないと見てか悠太くんは、「もういいもん、僕一人で食べるもん!」とマシュマロの箱も開け放った。
「あーん!」
そして一気に五個ほど頬張って、もしゃもしゃとほっぺた膨らませて食べている。なんかリスっぽい。可愛いけど、負けない、今日は負けないんだから。
こんなやり取りも決して初めてではない。ちょくちょくやってきて、最後にはわたしが根負けしてお菓子をつまむはめになるのだった。
はあ、とまたわたしはため息をつく。
「悠太くんみたいなお子様にはわかんないだろうけどね、大人になったら色々大変なの。健康管理、ほんとに大変なんだから」
20歳を過ぎると、年を取るごとに自分の体調の変化に敏感になる。だんだん甘いものを受け付けなくなってきたし、苦みや渋みに耐性もついてきた。だんだんと子どもの頃描いていた『オトナ』に近づいてるなあ、なんて思ってたまにぞっとしたりする。
「コドモ時代なんて貴重なんだからね。無駄にしちゃだめだよ、悠太くん」
そう言うと、悠太くんは俯いてじっと黙った。…。ちょっと待ってみても、喋らない。あ、あれ?わたしはちょっと焦ってきた。あんまり子どもだ子どもだと言ったら、さすがにプライドが傷ついたかしら。そうは言っても悠太くんは、もう自分で稼ぎを得ている、社会人なのだ。ど、どうしよう。わたしは心の中でおろおろする。
「…もう、何さ、大人大人って、大人の何がえらいのさ」
「へ?」
一瞬で、わたしの視界は反転した。ぽすん、と頭がソファに付く。目の前を悠太くんが覆い尽くした。むす、とちょっと怒ったような表情の中に、どことなく愉悦を滲ませて。
そして、話は今に至る。
「僕だって、いつまでもコドモじゃないんだよ?」
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速水ヒロcv前野智昭love♪(プロフ) - 面白かったです!!ごうちん格好いい(*´∀`) (2018年7月10日 21時) (レス) id: 5e287a4c41 (このIDを非表示/違反報告)
織目亜華璃 - 帝人が!帝人が〜〜〜!ヤバイデス!!トゥンク!! (2017年4月29日 14時) (レス) id: cd6be38c23 (このIDを非表示/違反報告)
彩乃 - まほしさん» ですよね…!!はい、また携帯買ったらお知らせ致します(笑) (2017年2月27日 18時) (レス) id: 39f7ff3018 (このIDを非表示/違反報告)
まほし(プロフ) - 彩乃さん» Twitterって公式非公式いろいろ情報入ってきて楽しいですね。機会がありましたらぜひ〜^^ (2017年2月21日 23時) (レス) id: 98138b6672 (このIDを非表示/違反報告)
彩乃 - んんBプロプラス素敵ですね…!!!Twitterはまだ携帯持っていないので見るしかやってませんが、その内お話したいなぁ、とか…() (2017年2月20日 12時) (レス) id: 39f7ff3018 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まほし | 作成日時:2017年1月16日 13時