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*🌷*
そこからの事運びは、かなり速かったと思う
私の言動に驚いた彼は急いでナースコールを押した
それから医者がやって来ていくつかの質問に答えると、いろいろな検査が始まり、
正式に記憶喪失であることを告げられた
そこから数日は、正直実感が湧かなかった
“あったものが無くなった”という穴の空いたような感覚は特になく、
周りから掛けられる情けに、少し困惑さえしていた
しかし、時間が経っていくにつれて段々と自分の中で現実味を帯びてきた
最後の記憶の中では初冬だったのに今は春だし、
覚えのない人が見舞いに来て親しげに話しかけてくるし
そうなれば嫌でも自覚できてしまった
ドラマや漫画だけの世界だと、そう思っていたのに
.
私が目を覚ましてから、大体一ヶ月が経った
記憶をなくす前の私はかなり上手く人間関係を築いていたらしく、
頻繁に人が来るため、幸い寂しくはなかった
窓の外をぼーっと眺める
公園で遊ぶ子供たちを見ていると、コンコンとノックが聞こえた
「おはよ、A」
『あぁ、おはよう、ブルーク』
あの日の男性は、ブルークという名前らしい
本人曰く、私と彼は仲の良い友人だった、と
そのためか、彼は毎日のように病院に訪れてはいろいろな話をしてくれる
決まって来るのは朝10時
1週間に一回くらいは花を持ってきてくれている
『今日の花はなに?かわいいね、それ』
「ん〜っとね…確か、スイートピー。春に咲く花なんだって〜」
彼は優しくて面白い
気遣いもできフレンドリーで、
親しみやすい雰囲気があり、その上顔も整っている
こんなに完璧なら恋人くらいいそうだが、
聞いてもいつもはぐらかされてしまう
…彼女とかに怒られないのかしら
彼はあまり自分についての話もしないし、前の私についても話さない
教えてもらったのはざっくりとした関係だけで、
思い出やいつから親しかったかなどは一切教えてくれなかった
.
そこから二時間ほどずっと喋っていた
病室で一人で過ごす時間はあれほど長いのに、
彼と過ごす時間はあっという間に過ぎていく
「_____、って、あ。もう12時だね」
『そろそろ帰る?』
「ん〜そうしよかなぁ」
明日も来る、と言って手を振る彼を見送って、天井と向き合う
…いつになったら、思い出せるんだろう
ただ漠然と考えながら目を閉じた
*🌷*
思い出せていない人物の名前は全部カタカナ、
思い出した人物は正式名称で書きたいと思っております。
例)ブルーク→Broooock
次話でわいてメンも出てくるのでお楽しみに!
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作者名:真月 | 作成日時:2024年3月26日 15時