【WT】亡霊への愛言葉【br】 (ページ1)

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Prologue ページ1

＊🌷＊

夢を見た

大好きな人と一緒に、いろんなところへ行って

他愛のない話をたくさんして

かけがえのない日々を送る

そんな、幸せな夢を

「A」

『なぁに？』

「んふふ、呼んだだけ〜」

ふわふわした優しい声で私を呼ぶ

赤茶の癖っ毛が少し揺れて

綺麗な藍色の瞳が、これでもかと愛しさを含んで私を映す

そう、とても幸せな_____________

.

意識が浮上する
最初に見えた天井は白く無機質で、病院か、とぼんやりした頭が判断した

しかし、病院に来るような思い当たりがない
思い出そうとしても不鮮明で、やけに昔の記憶しか出てこない

…あぁ、そういえば、さっき幸せな夢を見たような気がする
起きたての頃は覚えていたのに、
不思議なほどスルスルと記憶は抜けていき、今はもうほとんど思い出せないけれど

不意に、ガラリと音を立てて個室のドアが開く
…私の知り合いでは無い
病室を間違えたのかと思ったがそうでは無いらしく、
私をみて目を丸くし、それから少し微笑んだ

「おはよ、A」

途端に、窓から勢いよく春風が舞い込み

カーテンをふわりと巻き上げていく

頭の中に浮かぶ、幾つもの疑問符
考えてもその答えは出てこない

柔らかい声

藍色の瞳

赤茶色の癖っ毛

戻ってきたのは、懐かしさと大きな後悔
はじめましてのはずなのに、何故か涙が込み上げてきて、既の所で押し込む

春特有の優しい匂いが鼻腔に広がり、春風が引いて行った時
ようやく喉に詰まった言葉が出てきた

『誰…ですか？』

＊🌷＊