花束にキスをして (ページ5)

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引っ越して、仕事仕事の毎日。
休日にも仕事を詰め込んで、プライベートなんてないくらい。

それでも我が家のサボテンは強く大きく、植え替えもしなきゃいけないくらいすくすく育ってくれてる。

あれから花は3回咲いた。
ピンクのきれいな花を見るのが私だけなのが勿体なくて、でも見せる相手もいなくて。
なんなら、ふとした瞬間にこのサボテンを覚えていてほしい彼を思い出す私は
とんでもない馬鹿だなと思う。本当に。

帰り道、ショーウィンドウに並ぶマネキンが派手なセットアップを着ていたとき。
デリバリーでよく頼んでいたとんかつ屋さんのチラシが届いたとき。
揺れてるのが可愛い、と褒めてくれたピアスをつけるとき。

部屋に帰ってサボテンを見たとき。
花が咲いたとき。

思い出すのは決まって、あの大きな笑い声と優しいキス。

もう30も手前なのに忘れられない恋をしてるなんて、周りに言ったら引かれるんだろう。
彼だって新しい恋をして、なんなら結婚して子供も生まれてるかもしれない。

それくらいの年月が経ってる。
あの日から時間が止まってるのは、きっと私だけ。

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