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綴じ終わったプリント達を職員室に運んで、「 いつもありがとな 」って先生の笑顔に軽くお辞儀して廊下に出る。
職員室前に下ろしていた鞄を手に取ると、下駄箱に向かって歩いて、角を曲がった所に、田中。
「 …帰ってなかったの 」
「 んあ、何急に。手伝った日はいつも一緒に帰る流れじゃん 」
「 まぁ、そうだけど 」
あの日以来、何故か田中は放課後一人で居る私の所にたまにひょこりと顔を出すようになった。
三年になって同じクラスになってからは、私が何か引き受けた日は必ず教室に残っていて、こうやって雑用を手伝ってくれる。
「 行かなくて良かったの？ 」
「 あー？ 」
「 カラオケ。今日、誘われてたでしょ 」
「 あー。んなのいつでも行けるし 」
どうしてこんなに、私に時間を割いて、いつも優先してくれるのか。全く見当がつかない…というわけでもない。
少女漫画の主人公みたく、人の感情に対してあんなに鈍感にはなれないから。
もしかしたら。何度もそう考えてはみるけど、絶対にそうだと確信するには少し…自信が足りなかった。
私と田中は、あまりにも違いすぎる。
「 てか、よく知ってんね 」
「 え？ 」
「 俺がカラオケ誘われたこと 」
「 … 」
「 いいんちょー、結構俺のこと見てるんだ？ 」
…失敗した。余計なことを、口走るんじゃなかった。
悪戯っ子みたいな表情で私の顔を覗き込む彼から視線を逸らして、「 何言ってんの 」って、動揺を悟られないようにいつものトーンで。
「 田中と、田中の仲良い人たちの声って基本大きいから。聞いてなくても聞こえてくるだけ 」
「 …ふーん、 」
まぁそりゃそーか、って納得したように呟く彼の横でそっと胸を撫で下ろす。
俯いたままの私の視界に、いつも通る公園の道路側の花壇が映った。そこに意気揚々と咲く花に、思わず溜息を吐く。
「 あの花よく見るけど、何だっけ？ 」
「 …、パンジー 」
「 あ、それだ 」
いつか誰かが言っていた、パンジーの花言葉は、まさに私にピッタリだったから。
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作者名：朔×紺
x他1人 | 作成日時：2021年9月18日 9時
