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田中とは、元々、何か大きく関わりがあったわけではなくて。小学校、中学校だって違っていたし、一年も二年の時も別々のクラスだった。
でも、彼のことはそれとなく知っていて。
というか、田中の存在は、関わりがあろうがなかろうが、この学校にいるほぼ全員が認識しているんじゃないかと思う。
派手な格好も、廊下に響くよく通る声も、周りより、少し飛び抜けて良い容姿も。
とにかく、色んな意味で目立つ人だから。
『 何やってんの？ 』
そんな彼と関わりが出来たのは、高二の終わり頃のこと。
内申点のためなら、と良い子ぶって率先して引き受けていたクラスのこと…雑用を、一人教室に残ってこなしていると、
開きっ放しだったドアから顔を覗かせたのが、あのピンク色。
『 うーわ、めちゃくちゃダルいヤツじゃん 』
何か反応する前に私が座っている机の側まで近づいてきて、手元を覗き込んで顔を顰めた。
この時が顔を合わせるのも喋るのも初めてだったのに、田中はまるで元々知り合いだったかのような話し方をしてきて。
それに驚いて彼を見つめていたけど、『 なに、押し付けられでもした？ 』って聞き方に何故か少し苛立って、そのまま睨んでしまった。
『 別に、好きでやってるだけ 』
飛び出した自分の声が酷く冷たかったのを、今でも覚えている。
『 ふーん 』
『 … 』
全く興味の無さそうな返事に、素直になんだコイツって思った。
元々、いけ好かない、合わないタイプだとは思っていた。私とはどちらかと言えば真逆の人種だから。
知り得ることのない、キラキラした世界で生きている彼らと交わることはない。
それが悲しいとか辛いとかじゃなく、ただそこにある事実として、当たり前のように、すんなりと受け入れていた。
『 …え、何 』
『 んー、これって三枚ずつ？ 』
『 いや、ちょっと。何してるの 』
だから、私の前の席の椅子をコチラに向けて、どし、と腰を下ろした田中が、山積みのプリントを手に取った時。
『 何って。一人より二人でやった方が早く終わるべ？ 』
当たり前だろ、みたいな顔でそう言って、白い歯を見せた時。
なんだコイツ、って、そう思った。
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作者名：朔×紺
x他1人 | 作成日時：2021年9月18日 9時
