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「お疲れ様でした、お先に失礼しますね」
22時。
バイトが終わって帰り支度をして急いで外に出る。
春の夜はまだ少し風が冷たくて、でもバイト終わりの身体には心地良い。
初めて一緒に帰った日もこんな夜だったな。
私が歩きだからってわざわざ自転車から降りて同じペースで歩いてくれて、そこから高地も歩いてくるようになったんだっけ。
懐かしいな。あの頃はもう好きだったかも。
会いたいような、会いたくないような不思議な気持ち。
そろそろ返信しなきゃ、とカバンからスマホを出すと、後ろから聞きなれた声がした。
「Aおつかれ」
「ひっ」
「なんだよ人をおばけみたいに」
「……こーち？」
「正解」
従業員出入口の横で柱にもたれてたのは高地。
……なにごと？
「あ、昨日ごめんね、急いで帰って」
「いやまじ焦ったから。夜遅い日はちゃんと送らせて」
「優しいねえこーちくんは」
距離感が変わらないことが嬉しくて、でもそれだけ意識されてなかったって実感して少し悲しくて。
「なにしてんの、店長まだ中にいるよ？」
「A待ってた、連絡返してくれないし」
「……スマホ見てなかった」
なんでだよ！って笑う高地が理解できない。
待ってた？なんで？
期待してしまいそうになるのは嫌だから、ちゃんとケリをつけたい。
「…なんで」
「昨日あんなこと言われたのにさあ、すぐ帰られたら話もできないし電話も出ねえし」
「……」
ちょっと話そう、と近くの公園のベンチに並んで座る。
不安と期待と、あとの気持ちはなんなんだろう。
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作者名：朔×紺
x他1人 | 作成日時：2021年9月18日 9時
