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私たちがバイトしてるのはビル内のカフェ。
季節だからって最近はいちごのメニューが増えて、それ目当てのお客さんで大忙し。
「あー疲れた、ね、こーちお腹空いた」
「おつかれ、そのイチゴ食べちゃおうぜ」
3年目ともなれば慣れてくるもので、大量に入荷されるイチゴを少し食べたところで困らないことだってもう知ってる。
「俺ら始めたての頃にもこうやってイチゴ食べてたよな」
「私がお客さん怒らせちゃって泣いてたら持ってきてくれたよね」
「いやあの時さ、当たり前だけどAが泣いてんの初めて見たから、なんとかしなきゃって思って必死だった」
「その節はどーも、」
私たちがバイトを始めてすぐの頃、私がミスしちゃってお客さんに怒られちゃった日があって。
先輩たちが必死にフォローしてくれたおかげで問題にはならなかったんだけど、初めての大きなミス、それも男性に大きな声で怒鳴られるって経験はめちゃくちゃ怖かった。
お客さんが許してくれて、裏に戻ったらもう涙が止まらなくて。
誰にもバレないうちに泣きやもうと必死な私に、高地が『食べな、バレないから』って持ってきてくれたんだよね。
「あの日はこーちに救われたんだよ」
「なんだそれ」
「さすが、みんなに優しいこーち」
煽てるみたいな言い方でしか感謝を伝えられないってことをきっと彼はもう知ってて、くすぐったそうな顔で笑ってくれてる。
「ねえこーち」
もう無理かもしれない。
「あの頃から好きだよ、こーちのこと」
長年温めてきた気持ちはようやく言葉になって、でもそれはきっと、私たちの関係を大きく崩す言葉で。
「イチゴありがと、先戻ってんね」
何もなかったみたいにホールに戻って、帰りの時間が合わないように閉店作業が終わってすぐ、お店をあとにした。
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作者名：朔×紺
x他1人 | 作成日時：2021年9月18日 9時
