05 ページ5
──ウソだといってくれ
からかうのはやめろ、デク。そんなふうになにか言おうとしたのに、何も出てこなかった。
──デクには、あの化け物が見えてないのか？
体が竦んで、動けなかった。けれど目を離した隙に、その化け物はもう居なくて、なんだ、見間違えだったかとほっと胸をなでおろした瞬間──だった
何か硬いものがコンクリートに打ち付けられるような音がして、後ろを振り返る。
そこには、奴がいた。着地したコンクリートには大きくヒビが入り、突然のことにデクが「な、なに！？」と涙目になる。
仮面を被っているのに、わかった。
──俺を見ている。
「──────」
その化け物は咆哮した。何を言っているかわからない、でもそれは、ビリビリと空気を揺らして、まるで押しつぶされるかのような感覚になって、気づけば腰を抜かしてぺたりと座り込んでいた。
「か、かっちゃん、なんか大変だよ！早く逃げよう」
デクには、この化け物が見えていないからか、ぐいぐいと腕を引く。オメーも逃げろとか言おうとしたはずなのに声にならなくて、ただ、一歩一歩こちらに近づいてくるその化け物を、見ることしか出来なかった。
化け物が大きく手を振り上げる。
生まれて初めて、死を身近に感じた。
──ころされる
そう思った瞬間、化け物が悲鳴をあげた。みれば、からだに1本の日本刀が突き刺さっている。
遅れて、黒い着物を纏った女性がその化け物の背中に降り立ち、刀を引き抜いた。血が吹き出す。
「──」
なんと言ったかは聞こえなかったが、女性は何かをつぶやいた。次の瞬間には、その化け物は四肢烈断され、悲鳴のような声を上げて塵になって消えた。
「か、かっちゃん……？」
その女性も見えていないのか、キョロキョロとしながら、腰を抜かした俺の腕を必死に引くデク。
女性は俺を見ながら、納刀する。それから近づいてきて、話しかける。
「きみ、大丈夫？」
黒い着物に、よく映える綺麗な白髪を2つに結んで、刀を提げた女性。なんとなく、人間じゃないことはわかった。けれど、その姿はこわい化け物を倒したヒーローの様に写って。
「これくらい大丈夫だ！」
「かっちゃん何と話してるの……？」
不安げにデクが言う。
「そう。怪我がないなら良かった。」
女性はそれだけ言って、くるりと踵を返す。途中でああ、言い忘れたと後ろを振り返ってから俺に告げた。
──帰り道には、気をつけてね
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 147人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
漱(プロフ) - キハルさん» ありがとうございます！楽しんで頂けたのであれば、何よりです！これからも頑張ります！ (2018年10月31日 21時) (
レス) id: 7bc15f0ad8 (このIDを非表示/違反報告)
キハル(プロフ) - 完結おめでとうございます！とても素敵なお話でした。違う作品も興味があるので見てみます。これからも頑張ってください！ (2018年10月31日 21時) (レス) id: 21caf40902 (このIDを非表示/違反報告)
漱(プロフ) - 立青さん» コメントありがとうございます！どちらも素敵な作品なので、壊さないように大切に書きたいと思います！更新頑張ります！ (2018年10月1日 9時) (レス) id: 7bc15f0ad8 (このIDを非表示/違反報告)
漱(プロフ) - キハルさん» コメントありがとうございます！2つの作品が好きな方がいらっしゃったようで嬉しいです…！更新頑張ります！ありがとうございます！ (2018年10月1日 9時) (レス) id: 7bc15f0ad8 (このIDを非表示/違反報告)
立青(プロフ) - 同じくどちらも大好きな者です。少し読んだだけで面白いと確信しました！更新楽しみにしてます。頑張って下さい！ (2018年10月1日 5時) (レス) id: 93dc479144 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：漱 | 作成日時：2018年9月30日 21時
