【合作】僕らに朝は来ない。

第9話 byどんぐり ページ9

──俺が一体何をしたって言うんだろう。


　無実の罪人である田中海影(たなかみかげ)がそんなことを思うのは今日が初めてなどでは無く、少なくとも一日に3回以上はそう文句を心の中で垂らしている。


｢だるい……暇……｣


　海影は独り身で、ゆったりと暮らしていけるだけの収入があった。

　金銭面での余裕から何かと学んだり遊んだりを繰り返していた所にこれだ。皮肉な事に友達と呼べる存在も家族も居なかったので誰も海影の投獄によって悲しまないのが唯一の心の救いだ。

　連れてこられた時に始めた見張りの行動予測や心理状態当てゲームは得意分野にも関わらず優秀な見張りのためになかなかやり甲斐のある楽しいゲームとなっていた。


｢…それも…飽きてきたし……｣


脳内では生き生きと“脱獄”という単語やその計画が飛び交う。しかし人見知りで喋ることが苦手な海影の口から飛び出す言葉も、ましてや行動なんて精々たかが知れていた。


──だけど。


どうせいつか死ぬならば、罪人のままならば、足掻いてみたっていいんじゃないだろうか。

罪人の共有スペースに隠した、
口では言えなかったその言葉を、
紙切れに綴られたその言葉を、

同じ気持ちの誰かが拾うことを願って。


今日も硬いベットで、青空の夢を見た。


──“一緒に逃げませんか”


乱雑に書かれた文字を、拾う者は居るのだろうか。



｢……｣

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