第1話 byくろーさぎ ページ1
――20✕✕年。
日本は、世界で最も殺人の多い国と化していた。
海外からの観光客は激減し、日本から国外に移る者も出て来た。
人口の急激な減少に、焦った政府は一つの法律を立てた。
“未実行殺人事件及び復讐心対策事件対処法”
通称“無実の法”。誰かに対し復讐心を持つ者を、殺人を起こす前に捕まえてしまうという前代未聞の法律である。
その為に開発されたロボット“ハーピー”は、対象の復讐心に反応する。反応があった者は殺人犯と見なされ、未実行の罪で投獄される事となる。
政府の管理する監獄、通称“夜の国”へ。
しかしこのハーピーはとてもミスが多く、復讐心を持たない無実の者にまで反応してしまうのだ。
*
「はぁ……」
夜の国の東棟、一階北の牢屋では、今日も無実の罪人のため息が聞こえてくる。
「もう嫌だ……帰りたい……」
「何で私達がこんな目に……!!」
「俺は何もしてないだろ!!復讐心なんて持ってねぇよ!!」
皆が絶望している。彼らは復讐心など持った事もない、善良な人間ばかりだ。それなのにハーピーのミスによって投獄され、他の有罪人達と同等の扱いをなされている彼らを、人は“無実の罪人”と呼ぶ。
(はぁ、今日も皆ピリピリしてるなぁ……)
19歳の夕崎遠李もその一人だった。復讐心など持った事もないのに牢屋に入れられ、薄暗い部屋で退屈な日々を過ごしている。
(……って言っても、漫画とかゲームとかは貰えるから良いけどさ……)
大衆向けの人気ゲームなんてもちろん貰えない。脳トレだの計算問題だの、聞いただけで頭が痛くなるようなゲームばかりだ。
(ま、オレはプレイした事ないけど)
というか、する気も起きない。ろくに家具も置かれていない簡素な部屋の中に、期待していたものとは遥かに違うつまらなさそうなゲームと漫画が放り込まれた時は、心底がっかりした。
(ご飯なんか和食で凄い質素だし、でも必要最低限の栄養は取れてるらしいし、管理人達は一部を除いて当たりがキツいしほんと嫌になるな……)
硬いベッドにごろんと横になり、見慣れた廊下の風景をぼんやりと眺める。今頃は仲の良い友人と一緒に、平和に楽しく暮らしていたはずだ。それなのに……。
「……よしっ、考えても分かんないんだもんな!切り替えて、オレは昼寝しよっと!寝よ寝よ!」
まるで夜のように薄暗い中、ざわざわと行き交う夜の住人達に、遠李は背を向けた。
日の目を見られるチャンスが来るのを、この時の彼はまだ知らない。
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カルク(プロフ) - 更新しました!! (2019年7月17日 8時) (レス) id: 46db662a70 (このIDを非表示/違反報告)
カルク(プロフ) - 更新させていただきます! (2019年7月17日 7時) (レス) id: 46db662a70 (このIDを非表示/違反報告)
nekoarisu(プロフ) - 更新させていただきました! (2019年7月16日 21時) (レス) id: 322193fd57 (このIDを非表示/違反報告)
nekoarisu(プロフ) - 更新させていただきます! (2019年7月16日 21時) (レス) id: 322193fd57 (このIDを非表示/違反報告)
味噌鯖 - しました! (2019年7月16日 15時) (レス) id: 9ffca39a54 (このIDを非表示/違反報告)
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