伍拾玖 “〃 (6)” ページ17
『龍頭抗争』開幕から70日目───。
「太宰!何処だ太宰!おい太宰、いやがるんだろ?出てこい!」
「ふあぁ……うるさいなあ」
『中也さん、如何されましたか?』
バアァンッ!と乱暴に開けられた扉の音に太宰さんは顔を顰めて、のそりと顔だけ上げた。
余程太宰さんを探すのに苦労したのか、疲弊した様子の中也さんがツカツカと足早に此方に寄って来る。
「ああ、ここにいたか、太宰。それにAも。太宰は首領から呼び出しがあったってのに、何寝てやがる。而も何でAに膝枕して貰ってんだよ!!」
「やァ中也か、おはよう。今日も君という人間に大変適したサイズをしているねえ、実に結構。私に何か話しかい?善いとも。今から顕微鏡を持ってくるから、ちょっと待ってね…あああ、でもAの膝枕から離れたくないぃぃ」
私の膝に顔を埋めたまま腰に手を回して駄々を捏ねる太宰さんを見て、中也さんの方からブチッと何かが切れる音が聞こえた。
……ブチッって何だ、血管切れたのか?抑々それは身体的に大丈夫なのか?
「阿保!今外がどういう状況か判ってんのか?ポートマフィア史上……いやヨコハマ史上最悪の大抗争だぞ!ほら、早く退け!今直ぐそこから退け!!」
「そんなに耳元で怒鳴らなくても判ってるって、嫉妬するなんて見苦しいよ?」
中也さんは太宰さんの頭を叩いた後、何とかして私から離れさせようとさせているのか腰に回されていた手を必死に剥がしていた。
(因みに彼此五分程、この攻防戦は続いた)
はぁぁ、と態とらしく大きな溜息を吐いた太宰さんは漸く私から離れて隣に座った。
そして机上に散乱した私が纏めた書類を手に取り、頭をポリポリと掻く。
「四大組織のうち、海外組織“ストレイン”は構成員の八割が死亡。“高瀬會”は頭目が暗殺されて指揮系統が瓦解。その他の組織も、揃って死の行軍中だ。武器商人の“陰刃”、元宗教組織の“聖天杖”、密輸組織の“KK商会”……憎しみと応報と疑心暗鬼が作り出した、血の狂騒曲だ。ま、心配いらないよ……全員死ねば自動的に終わる」
手にしていた書類を私に渡し、光の無い瞳で片方の口角を少し上げてニヤリと笑った。
その笑みを見た中也さんから微量の殺気が漏れ出る。
「本気で云ってんのか手前。お前と違って、この街の誰も死にたくはねえんだよ。寝てる暇があったら、抗争を終わらせに外に行きやがれ」
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黒龍(プロフ) - Mさん» 嬉しいお言葉、有難う御座います^^ (2019年11月23日 17時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
M - とてもおもしろかったです。 (2019年11月23日 1時) (レス) id: 5a0fa58d7d (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - りーこさん» 有難う御座います!頑張って続き書いていきますね (2019年6月24日 12時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
りーこ - 続きが楽しみです (2019年6月24日 6時) (レス) id: 140e75a81a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒龍 | 作成日時:2019年6月21日 21時