二度目の人生はあの子が愛した世界で “弐”【文豪ストレイドッグス】 (ページ14)

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伍拾陸 “〃 (3)” ページ14

｢“奴”？｣

『数日前に突然現れた、一人の異能者の噂です』

｢ああ、そいつは抗争をしている“すべての組織”を攻撃するそうだ。見境なくな。まさに狂戦士だ。呼び名は確か＿＿｣

｢確か“白麒麟”だな｣

『……よくご存知で』

何故知っているのか内心疑問に思い、横目でチラリと青年の方を見た。
だが青年は相変わらず薄い笑みを張り付けて此方を見ているだけで何を考えているのか全く判らなかった。
まるで首領＿＿否、敵と相対した時の修治や太宰さんを相手に話している気分だ。

｢噂で聞いたんだ。その姿を見て、生きているものはいないとか。目撃者が生きていないなら誰がどうやって名をつけたのだろうな？｣

｢どんな奴なんだ。やはり首が長いのだろうか｣

『作之助さんもですか？私もそれ思いました』

｢うむ……うむ？いや、そのキリンとは違うと思うが…………｣

私達の答えに少し呆れた表情で青年は返した。
……また皆がよく云うズレていると云う答えをしてしまったのだろうか。
私と作之助さんは顔を見合わせてそして眉を八の字にして少し落ち込んだ様子で青年の方を向いた。

｢そうか、間違えた｣

『間違えてしまいました』

｢ふふ、宝石強盗犯がその“白麒麟”だとすれば、鑑識ごときの出る幕はなさそうだ。失礼するよ｣

｢俺達はもう少し調べる。白麒麟の正体はともかく、その目的くらいは知りたい｣

『ええ、そうですね』

青年は一歩踏み出したが何かを思い出した様に此方を振り返った。

｢……ああ、そうだ。助言をひとつ。“白麒麟”が強盗をした目的は明白だ。退屈だったから、だよ。美しい宝石を見れば、心が動くかと思ったんだ｣

私達の間に長い沈黙が続いた。
この青年の助言は私達の頭の中に最初から(・・・・)出ていた仮説を確信させるモノとなったからだ。