検索窓
今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:121,980 hit

陸拾壱 “〃 (8)” ページ19

晴れない雨はない。明けない夜もない

……普通の人間は、そう思っている

『龍頭抗争』の開幕から、72日目──。





“白麒麟”は、昼の繁華街を歩いていた。
抗争により破壊された街路は、弾痕や爆発痕が目立つ。


人通りも少ない。
だが、全くの皆無というわけでもない。
勤め人、主婦、学童達のまばらな往来が、“白麒麟”の眼前を通り過ぎていく。


それを私は本社楼閣の最上階に近い廊下の窓から見ていた。
手にしている双眼鏡で今何が起こっているのか全てが見えると云う訳だ。



“白麒麟”が噴水のある広場に着いた。
そして彼は一台の露天屋台の前で止まり、その店の店員と笑顔で話し始めた。
恐らく花でも購おうと思ったのだろう。




『……それが罠だとは知らずに』




店員や周囲の通行人達が一斉に銃を構えると“白麒麟”の焦った表情が伺えた。
そこへ通行人達の間を蓬髪の少年が現れた。


話している内容は少年__太宰さんの服に付着している小型集音器を通して、私の耳に付けているインカムから全て聞こえている。




“白麒麟”の犯した失態(ミス)は二つ。
一つ目は異能を無効化する太宰さんという対抗手段(アンチユニット)には異能による攻撃は無意味だという事。


二つ目は組織を軽視した事。
彼は考え方や異能の事から個人軍(ワンマンアーミー)である事を好んでいる。
それ故に組織を軽視しがちな処が今回の失態に繋がったのだ。




<君は“大佐”を殺した……幾らなんでもやりすぎだ。あの人の死を黙って見過ごせるほど、私は優しくはない>




太宰さんはヘラヘラと笑っていたものの、仲間である大佐の死を嘆いていない訳が無かった。
報告した時の血が滲みそうな程キツく握り締められた拳を私は忘れる事が出来ないだろう。



“白麒麟”は太宰さんが現れた時から笑みを浮かべたまま、何も口出しせずに話を聞いていた。
だが、話を聞き終えると愉快そうにクツクツと喉を鳴らし嘲笑した。



そして彼の合図と共に本社楼閣の周囲を囲む様にして建てられていた楼閣の四つの内の一つが轟音と共に太宰さん達の居る広場の方へとゆっくり崩れ始める。


加えて広場を包囲する様に、無数の異能攻撃が降り注ぐ。銃を持った通行人達が次々に倒されていった。



“白麒麟”は最初から太宰さんの計画を見抜いていた。
その上で態と此の場所に来て、態と太宰さんの計画を本人の口から聞いた訳だ……全ては退屈凌ぎの為に。

陸拾弐 “〃 (9)”→←陸拾 “〃 (7)”



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (115 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
245人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

黒龍(プロフ) - Mさん» 嬉しいお言葉、有難う御座います^^ (2019年11月23日 17時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
M - とてもおもしろかったです。 (2019年11月23日 1時) (レス) id: 5a0fa58d7d (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - りーこさん» 有難う御座います!頑張って続き書いていきますね (2019年6月24日 12時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
りーこ - 続きが楽しみです (2019年6月24日 6時) (レス) id: 140e75a81a (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:黒龍 | 作成日時:2019年6月21日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。