Love Situation【ars短編集】３ (ページ10)

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翔と出会ったのは、大学の頃だ。

第一志望の大学に落ちて

滑り止めとして受けていた大学に通うことになった俺。

滑り止めの大学に通う、というのが何だか気に食わなくてクサクサしていた俺は

入学式すら行く気がしなくてサボろうかと思っていたけれど母ちゃんにキレられ。

新品のスーツを着て、慌てて会場に向かったのだ。

会場となる大きな施設の前。

当然ながら人はいなかった。

マジやべえ。と思わず呟き

何となく横を見た。

和也「……」

俺と似たような新品のスーツで。

時間がギリギリなことも知らないような顔をして彼はのんびりと桜を眺めていた。

遅れますよ。と声をかけたのは俺からだったけれど。

どっちが先に恋をしたかなんてことは分からない。

いつの間にか好きになっていた。

息をするみたいに。

自然と好きになっていたんだ。

そんな恋は未来を誓う愛へと変わり。

そして翔が病に倒れた。

気付いた頃には遅く

命の期限が宣告された。

翔「あと二年なんだって」

いつもと変わりない笑顔で翔は俺に言った。

翔「あと二年……俺の側にいてください」

その夜は

お互いの存在を確かめるように抱き合って眠った。

名前を呼び、愛を叫び。

どうしようもない胸の苦しみを紛らわせるように激しく求めた。

暗闇の中、翔は泣いていた。

俺に聞こえないよう隠しているようなその嗚咽が儚くて。

あんな普通に笑っていても

死ぬのが怖くない人間なんていないんだろうな。と思い知らされた。

でも翌日。

目が覚める頃にはいつも通り『朝、何食べる？』なんてキッチンに立っていた。

死ぬことって別に特別じゃないから

普通のままでいいじゃん。

彼がそう言った時の瞳の光は

強く咲き誇る花のようでとても美しかった。