Love Situation【ars短編集】３ (ページ29)

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和也「あ！のび太！」

数日後。

テレビ局内の廊下を歩いていた俺を見るなり彼は指をさしてそう言った。

翔「のび太……？」

和也「そう、のび太」

お疲れ。と丁寧に挨拶をしてから彼はククク。とあの悪戯っ子のような笑みを浮かべた。

和也「なんかちょっと残念な感じがね。のび太だな～って」

翔「……のび太……」

今まで同じ事を何回も言われてきたけれど

流石に彼から言われると少しだけ傷つく。

ハァ。と思わずため息をつくと

彼は不思議そうな顔をして俺の顔を見た。

和也「あれ？一応褒めたんだけど……」

翔「褒めた？」

和也「完璧じゃないところがイイんだよ。のび太って魅力的じゃない」

クフフ。と彼は笑うと

ズイ！と俺に顔を近づけた。

近いーーー！！！

肌白いーー！！！

頭の中ではそんな悲鳴がギャーギャー飛び交っているというのに

実際にはもうあまりに近すぎて声すら出ない。

和也「俺、あなたの事気に入ってんの」

香水だろうか。

爽やかな甘い香りがして。

彼の言葉も何だか甘く脳内に響く。

和也「あ、時間だ。俺行かなきゃ」

甘い雰囲気から一変、アッサリした声が聞こえて

なんだか全身がサァッと冷えきったような感覚がした。

和也「またね。櫻井サン♪」

ちゅ♪と可愛い音を立てて

彼の柔らかい唇が俺の頬に……。

俺の頬に………………！？

「二宮さん！やっと見つけたと思ったら！」

彼のマネージャーらしき男性がバタバタと慌ただしく『スミマセン！スミマセン！』と俺に謝るのを

俺は頬を手で押さえながら

ぼんやりと聞いていた。