Love Situation【ars短編集】３ (ページ15)

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それから俺は実家や、高校の時など色々な思い出を辿った。

『もうすぐ時間ですが、最後に行きたい場所はありませんか？』

柔らかい声に俺はベンチに座りながら笑う。

翔「あるよ」

それは、誰にも言わず

密かに願っていたことだった。

翔「……和也の生まれた日に。」

これが最後。

俺の最後。

全身を包んだ光に目を閉じて。

次に開く時にはもう景色が全て変わっている。

真っ白い病院は

ある意味、見慣れた景色だった。

透明の窓の前に生まれたばかりの命が並んでいる。

俺と和也が欲しいと願っていた愛のカタチ。

無理だと分かっていたけど

二人の子供が出来たらね、なんて。

冗談っぽい口調で願っていた。

その中にいた小さな赤ちゃん。

『二宮……』とお母さんの名前が書いてあるベッドで静かに眠っている。

ゆっくり壁を通り抜けてその子の隣に立つと、眠っていたはずのその子が目を覚まして

見えるはずのない俺を見た。

伸ばされた小さな手に触れ

その柔らかさに胸が熱くなる。

これから『和也』と名付けられるであろう君に俺は微笑む。

翔「……生まれてきてくれてありがとう」

あなたと出会えて良かった。

あなたに恋をして良かった。

翔「愛してる」

あなたに愛を叫ぶ。

それが俺の全てで

俺の、最後なんです。

＊完＊