Love Situation【ars短編集】 (ページ8)

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恋に気付いてから

結構長い年数が過ぎたけれど。

俺と彼の関係を表す言葉は見事な迄に『友達』だった。

勿論先に進もうと必死にもがいていたけれど、結局何も出来なかった。

こうなることが分かっていたなら

無理矢理にでもキスをして抱いてしまえば良かった。

ああ、綺麗だよ。

こういう場だからと普段は着ないスーツを着て。

寝癖でいつも跳ねていた髪も、今日はちゃんとセットされている。

いつものあなたも綺麗だけど。

今日はもっともっと綺麗だ。

やっと食事に手をつけた彼は一口頬張り

モゴモゴと何かを言ったようだった。

ニノが『何？』と顔をしかめるのを見てか、彼は急いでそれを飲み込み。

何かを言った。

『眩しい』とその口が動いたように見えた。

その後一瞬だけ

智くんと目が合った。

逸らしたのは俺だった。

「いつ忘れられるんでしょうね」

隣で呟いた彼女に俺は微笑む。

答えはもう知っているんだ。

翔「多分俺はずっとあの人だけを想って生きていくんだと思うよ」

フフ。と彼女が微笑んだ。

同じですね。と微笑んだ。

何でだよ。と思う。

俺は彼にずっと恋心を抱いてきて。

彼女にも俺じゃない好きな男がいて。

それで良いじゃないか。

俺は友達として彼のそばに居て

彼女はきっといつか恋心を実らせて

幸せですね、って笑えばいいじゃないか。

何が跡取りだ。

何が家柄だ。

俺らの気持ちを無視してまで

守りたいものってそんなものなのか。

……ふざけんなよ。

近い席で酒を飲み、笑う大人に心の中で呟いた。