Love Situation【ars短編集】 (ページ33)

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ひとつ進んでみませんか(A×O) ページ33

智「あげる」

それは

とても小さいけれど

どんなものよりも優しい魔法だ。

雅紀「これ好きだねえ(笑)」

智「笑うなら食うな」

雅紀「拗ねないでよ～」

ポイッと口の中に放り込んだアメは

ふんわりイチゴの香りがする。

智くんからもらうアメは

魔法のように俺の心を甘く溶かすんだ。

雅紀「仕事進んでる？」

智「ん、まあ順調かな」

俺の智くんはただの仕事仲間だ。

それ以上でもそれ以下でもない。

ただ智くんはよく俺のところへ来て

その度にアメを一つコロンと置いていくんだ。

いつも同じパッケージのアメ。

切らさないように常に買い溜めしているあたり相当のお気に入りらしい。

「大野さんすみませーん」

智「お、はいはい」

来たばっかりだったけど、すぐに智くんは誰かに呼ばれ忙しそうに自分のデスクへと戻っていった。

なーにが順調だよ。

忙しいくせに。

なんて俺は遠くからバタバタと小走りでどこかへいく智くんの背中を見送った。

･

･

智「ふ～、休憩休憩」

そして暫くして智くんがまたこちらにやって来た。

走り回っていたのか首筋にはかすかに汗が光っていた。

雅紀「汗かいてる」

智「水も滴るいい男♡」

雅紀「………………」

智「そこは笑う所でしょうが！」

俺と智くんは仕事仲間だ。

少し遠いデスクで、業務内容も大きく異なる俺らがなんでこんなに仲良しなのか、

俺でも謎だ。

でも居心地はサイコー。

お互いにマイペースな性格だから気を使わなくても良かったんだ。

ただの仕事仲間だ、と言うのはね

ホントは嘘。

俺はそんなこと思っちゃいないんだ。

智くんのことが好きだから。

仕事仲間以上の関係になりたい。

だけど今の関係が心地よくて

手放したくなくて

想いを伝えられずにいるんだ。

智「なー、相葉ちゃん。いいカフェ見つけたんだけど今度行こうよ」

雅紀「智くんがカフェとか珍しいね？」

智「俺だってたまにはお洒落なとこ行くわ」

雅紀「へー」

好きな女の子でも連れていくの？

なんて言えない。

聞く勇気もない。