Love Situation【ars短編集】 (ページ28)

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幸運と言うべきか不運と言うべきか

智くんと俺は同じクラスだ。

智「腹減った」

翔「知らないよ」

智「……翔くんが朝ごはんのとき焦らすから」

翔「嫌なら早く起きれば？」

そしてこれまた幸運なのか不運なのか。

智くんは俺の後ろの席で。

『腹が減った』とブツブツ俺に文句を言っている。

「大野、櫻井、お前ら仲いいのは分かるけど話聞いてくれよ(笑)」

翔「すみません」

智「……へーい」

教師から言われたそれが恥ずかしくて

自然と顔が熱くなってくる。

この時だけは

智くんが俺の後ろの席で良かったと心の底から思う。

だって、こんな顔を見られなくて済むから。

智「仲良しだって」

翔「…………」

智「幼馴染みだもんね、俺ら」

誰に聞かせるわけでもなく

ポツリ、呟くような声だった。

『幼馴染み』

この壁は宇宙に行くまで高くて

超えることなんてきっと一生出来やしないんだ。

壁の厚さは薄くて薄くて

こんなに近くにいるのに

結局俺は向こうの世界、

智くんのいる世界に行けないんだ。

近いのに、遠い。

俺らの関係を言葉にするならきっとこれが一番合っている。