Love Situation【ars短編集】 (ページ19)

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智「……やめてよ。そんな、顔しないで」

大野さんは今にも泣きそうで

やっぱり三十を過ぎているようには見えなかった。

智「そんな顔されたら、僕……っ！？」

人のいない駅のホームで

大野さんの身体を引き寄せて。

ぎゅう。と強く抱き締めた。

雅紀「好きです」

智「えっ……」

雅紀「大野さんのこと何にも知らないけど。……好きなんです」

暫く驚いたように固まっていた身体。

それの力がフッと抜けたと思ったら

ぎゅう。と柔らかく抱き締め返されていた。

智「あの……ぼ、くも」

優しい声が耳元で聞こえる。

智「僕も、好きです」

驚いて大野さんの顔を見ようとしたけど思いの外強い力でさらに抱き締められた。

智「……顔赤いから……ちょっと、見ないで」

か、可愛いーーーーー！！！！

ドッキュン！と心がさらに撃ち抜かれて俺はにやける顔を抑えるのに必死だった。

それから大野さんの顔が見れたのは五分くらい後。

次に来る電車をベンチに並んで座って待っていた。

智「夢みたい」

雅紀「夢じゃないですよ」

智「ふふ、そうだね」

微笑んだ大野さんはチラッと周りを確認するような仕草をして

触れるだけのキスをした。

智「……ま、またね！」

バタバタと走っていった後ろ姿を見つめ

あの人の恋人になることはある意味大変なことになりそうだな、と思った。