Love Situation【ars短編集】 (ページ18)

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翌日。家に帰る電車の中。

ガタガタ揺られながらぼんやりと外の景色を眺めていた時だった。

智「あの、こんにちは」

雅紀「えっ！」

肩をポンポンと叩かれ、振り向けば大野さんがふんわり笑っていた。

ヤバイヤバイ！心の準備が！！

潤……いないし！！！

智「大学の帰りですか？」

雅紀「あ、はい。」

智「……いいねぇ、若いって」

雅紀「は？」

若いっていっても大野さんと俺、そんなに年齢変わらないんじゃ……？

智「ボクね、若く見られちゃうみたいで。もう三十過ぎのおっさんです」

雅紀「さ、三十過ぎ！？」

思わず大きい声を出してしまった俺に一斉に視線が向けられて俺は慌てて両手を口で抑えた。

雅紀「同い年くらいかと……てっきり」

そんな俺に大野さんは困ったように笑って小さく俯いた。

智「驚かせてごめんね」

雅紀「そんな謝ることじゃ……」

なんでこんなに切ない顔してるんだろう？

いつものふにゃっとした大野さんとは少し違う雰囲気で。見てる俺も何だか胸が締め付けられたように痛い。

智「……やっぱりこんなオッサンじゃ恋愛対象に見れないよね」

コロン。と大野さんの目元で光ったのが涙だということに気付いたのは、次の停車駅にちょうど着いたところ。

智「じゃあ、」

サッと涙を拭って何事も無かったかのように立ち上がった大野さん。

大野さんの降りる駅についてしまったらしい。

ああ、俺瞬発力があって良かった。

この時は心の底からそう思った。

雅紀「待って！」

智「どうして…………」

人の少ないオンボロの駅。

最寄りじゃないここで降りた俺に大野さんの目が大きく開いた。