第2色 ハロウィーン ページ8
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──夜。ハロウィーンの夜。
あの世とこの世の境界が、最も薄くなる夜。
ワイルドハントの始まり。
アリルはハロウィーンのごちそうを端の方で少しだけ食べ、小さなジャック・オー・ランタンを持ち出すと、すぐに席を立った。
ホルダーから杖を出す。力を込めれば、自分の手が透けていった。
角水蛇の角を芯材に使った杖は、浮遊能力のほかに透明になる能力と、危機を知らせる能力があるからだ。
アリルには行きたい場所があった。
幼い頃、妖精に育てられた者を
揺りかごから連れ出された赤子は妖精たちの
アリル・エルトダウンという少年がそれだった。
アイルランドで生まれ、取り替え子として育ち、なぜかロンドンにいた妖精の子と取り替えられて、代わりに孤児院に拾われた。
愛すべき隣人と会話ができ、妖精以外の魔法動物ともある程度の意思疎通ができる。
加えて妖精の加護によって、特殊な「眼」を持っていた。焦点がずれた眸。魔法族とも、非魔法族とも違う視界を有する少年。
ダンブルドア謹製の眼鏡によってしか制御できないという不甲斐なさではあるものの、それを補って余りあるほどの「加護」を、彼は得ていた。
蛙チョコレートのカードにもなっている、スリザリン出身の大魔法使い──マーリン。
マグルの伝説における彼は人間と夢魔との混血児であり、幼い頃から魔法ではない、不思議な"異能"を持っていたという。魔法族が知っている「真実」によるなら、彼は純血であったようだが。
ホグワーツに限らず、魔法使いと魔女のための学校に通う者は、純粋なヒトではない場合がある。例えばヴィーラの子孫。例えば──これは感染症の一種だけれど──狼人間。例えば半巨人。
それと同じだ。
生まれる場所は選べない。育てられ方も同様に。
偶然取り替え子として連れていかれ、偶然、妖精をはじめとした魔法動物たちに、育てられた。
鮮明には覚えていないものの、自由に飛び回り、魔法を使い、愛されて育ったことだけは記憶している。
だからアリルは
クリスマス休暇や夏休みに愛しき家族と会うように、育ての親たちに会える日を、楽しみたくて。
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作成日時：2020年3月19日 16時
