第0色 ページ2
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それからハリーは事あるごとに
もちろん、彼が持っていた『天体とその動き──膨張し続ける宇宙』というタイトルの本を返すためだ。
レイブンクローの談話室の近く、中庭のあの星空の下、大広間の中をぐるっと見回したことも何度目か知れない。
けれどもあの子は見つからなかった。
だからハリーは授業後、レイブンクローの寮監に訊ねてみることにした。
「フリットウィック先生。レイブンクローのエルトダウンって子に会いたいんですけど……」
「夕食の時に会えなかったのかね？」
「それが……」
この間たまたま声をかけたこと。
そのとき驚いたあの子は本を落としていってしまって、それを返したいということ。
事情を洗いざらい話すと、フリットウィック先生はにっこり笑って頷いた。
「そういうことなら、金曜の午後に会えるよう手配しておこう。温室の前で待っていなさい」
温室。あのよくわからない植物がたくさん植わっているところ？ あんなところにあの子が来るのかな。
分からなかったけれど、ハリーはフリットウィック先生の言うことに従った。
その日の夕食のあと、ロンと廊下を歩いていると、ハーマイオニーが待ち構えていた。ハリーが箒を貰ってから一言も口をきかなかったのに、今さら気が変わったのだろうか？
「エルトダウンには近付かないで。これ以上グリフィンドールの点数を減らすのはやめて」
「君には関係ないだろ。ハリーは本を返そうとしてるだけだ」
彼女はこちらを睨みつけた。ロンが一歩前に出て、ハリーを庇う。すると彼女はもう一度強く二人を睨みつけ、去っていく。
エルトダウン、という名前のあの子がどれだけ嫌われ、そして恐れられているか、この二日だけでよくわかった気がする。
ハリーは寝室に戻ったあと、ベッドの近くに置いている『天体とその動き』を開いてロンと一緒に覗き込んだ。
難しい単語がたくさん並んでいる。天文学で習っているのとは違う星座の名前が書いてある。そこから考えるに、マグルの世界の本なのだろう。
ということはあの子はマグル生まれか、もしくは、ハリーと同じようにマグルの家庭で育ったのだ。
本を閉じ、星が散りばめられた紺色の表紙を撫でて、ベッドに潜り込む。
なんだか無性に星空が見たかった。
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作成日時：2020年3月19日 16時
